立憲の腰砕け。野党第一党が聞いて呆れる「岸田軍拡」擦り寄り姿勢の醜態

 

自民党の「抑止力」という罠に見事に嵌った立憲民主党

野党第一党がこういう腑抜けのようなことになってしまう原因の第1は、自民党側が仕掛けた「抑止力」という罠に見事に嵌ってしまっているからである。実際、先日、同党の幹部と懇談した際に、私がなぜ同党の防衛政策がどんどん曖昧化しているのかという趣旨のことを問うと、彼は即座に「いや一定の抑止力は必要だから」と答えた。さあ、ここでもまた「一定」だ。一定とはどのくらいなのか?それには答えがなかった。それは当然で、軍事的抑止力には「一定」などあるはずがない。それはお互いに相手を軍備で脅し合い、より深く疑心暗鬼に陥った側が侵略を躊躇うようになるかもしれないと想定する心理ゲームであるから、どこまでやったら相手は必ず折れてくるという基準はない。だから必ず際限のない軍拡競争に陥るのである。

一般論としてそうである上に、法理的に言っても「武力による威嚇」は国連憲章でも日本国憲法でも禁じられている違法・違憲行為である。そのどちらでも「武力による威嚇または武力の行使」と言われているように、行使可能な武力でなければ威嚇にならないし、また威嚇するつもりが相手の予想外の反応によって偶発的な戦闘に発展する可能性も大いにあって、両者の間に垣根がないので、両者はワンセットで禁止されているのである。こんなことは国際法と憲法の理解の初歩の初歩だと思われるが、「抑止力」と言われるとそんなことは頭からスッポ抜けて、野党第一党の幹部も「あ、一定程度は必要ですね」と口走ってしまうのである。

しかし抑止力は軍事的ばかりとは限らない。蟻川恒正=日本大学教授は「憲法9条の『陸海空その他の戦力はこれを保持しない』という規範は、日本が武力行使以外の選択肢を考え抜く知性を鍛えてきた。……軍事化への道を封じたからには、政治や外交で局面を打開する方法を決死の覚悟で探し出さなければならない」と指摘している(5月4日付朝日)。

その通りで、リベラルな野党第一党は自民党に対して、抑止力と言えば軍拡による相手へ威嚇という無効で不法な手段しか思い浮かばないことの愚を説くのでなければならない。そしてそれに説得力を持たせるには、まさに政治的・外交的、経済的、文化的等々の軍事的以外のすべての抑止力を総動員して局面の打開を成し遂げるための「知性」と「決死の覚悟」を発揮しなければならない。なのに、自民党から「抑止力は必要だ」と言われて「あ、そうですね、一定程度なら」と言っているようでは、野党第一党として全くの役立たずということになる。

以上に関連して、野党第一党の腑抜けの原因の第2は、米日好戦派から繰り出されてくる「中国脅威論」「台湾有事切迫論」の心理操作に対して、この党が戦えないどころか、完全に巻き込まれてしまっていることにあるが、これは話せば長いことになるので、今日は省略し別の機会に譲ることとする。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 立憲の腰砕け。野党第一党が聞いて呆れる「岸田軍拡」擦り寄り姿勢の醜態
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け