世界の分断にいっそうの拍車。G7広島サミットで分かった危機的な国際情勢

2023.05.25
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ゼレンスキー大統領の電撃来日を含め、岸田政権にとって想定以上の追い風となったG7広島サミット。一方でこのサミットは、国際社会におけるさまざまな「歪み」をも顕在化させてしまったようです。外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、広島サミットが世界の分断を進めることとなってしまった理由を解説。さらにこの先、G7自体が内部崩壊に行き着く可能性を指摘しています。

G7広島サミットから、国際情勢の「何が分かった」のか?

厳重な警備が敷かれる中、G7広島サミットが平和裏のうちに終わった。今回のサミットで最も印象的だったのは、言うまでもなくウクライナ・ゼレンスキー大統領の広島訪問だ。ロシアによる核使用の現実的脅威に直面するウクライナの大統領が、核を投下され壊滅的被害を受けた広島を訪問したことは、世界の歴史上も極めて象徴的な出来事となった。ゼレンスキー大統領が広島を訪問した理由は、正に“被爆地広島から被爆地になる恐れのあるウクライナの大統領として、被爆の加害者となる恐れのあるプーチンをけん制する”ことだった。

そして、もう1つの理由は、対ロシアで現在も態度を明確にしない国々に対して、ウクライナへの理解を求めることだった。広島に到着したゼレンスキー大統領はインドやインドネシア、ベトナムなどいわゆるグローバルサウスの国々と次々に会談し、対ロシアで協力するよう呼び掛けた。今回のサミットにはG7諸国だけでなく、こういったグローバルサウスの国々が多く参加しており、ゼレンスキー大統領にとっては短期間で多くの指導者たちと対面で会話できるというメリットがあった。今回の訪問には少なくとも上記2つの理由がある。

世界の分断をいっそう進めることとなった広島サミット

だが、今回のG7サミットは世界の分断がいっそう進んでいることも露呈した。まず、広島サミットの共同声明では、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの非難は当然として、中国へも強い懸念が示された。東シナ海や南シナ海における海洋覇権などに加え、中国が経済依存関係を武器化して経済的威圧を行っており、それに対抗するため新たな枠組みを創設していくことでG7が一致した。中国は一連のG7サミットに反発し、在北京の日本大使を呼び出して抗議し、米国へは半導体関連で経済的威圧を行った。

また、中国はG7と時を合わせるかのように、陝西省西安市で5月18~19日にかけて、中央アジア5カ国とともに「中国・中央アジアサミット」が開催し、習国家主席が5カ国と経済的関係を結束させていくことを表明した。さらに、その後ロシアの首相が北京を訪問して習国家主席と会談し、中露の協力を強化させていくことで一致するなど、G7は対中露包囲網のような様相を呈している。中露両国もG7に対抗していく意思を鮮明にしており、今回の広島サミットは世界の分断をいっそう進めることになった。

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