岸田政権が存続する限り税の重さを耐え忍んでいくしかない国
自衛隊の主力兵器は、「国産」とされていても、多くの場合、アメリカ製の兵器を日本の軍需産業が生産し、組み立てる「ライセンス国産」である。ライセンス国産兵器の価格は、アメリカ国内の価格の2倍ほどになる例も珍しくないという。「ライセンス・フィー」(手数料)や「ロイヤルティ」(特許料)を米企業に支払わなければならないからだ。
アメリカにとって、優秀な科学者、技術者の多くがかかわっている軍需産業こそが経済の屋台骨である。国防総省やCIAは、軍需産業と「軍産複合体」と呼ばれる利権ネットワークを形成し、米国や同盟国の外交防衛政策を動かしている。
米国の利益に寄与する48兆円の防衛予算拡大策。この途方もない手土産をたずさえて岸田首相は2023年1月、ワシントンを訪れ、バイデン大統領の歓待を受けた。
バイデン政権には、政治的にリベラルでも外交・防衛面ではタカ派で、軍需産業とも深い繋がりを持つ、いわゆる“リベラルホーク”が多い。ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌーランド国務次官、サマンサ・パワー国際開発庁長官らがそうだ。巨大軍需企業レイセオン・テクノロジーズの取締役だったオースティン国防長官もいる。岸田首相がワシントンで、どれだけ気分の良い時間を過ごしたかは想像に難くない。
岸田首相が米側に抗議するフリをみせてまで、「防衛費増額はわが国自身の判断」と強調する背景には、これから新防衛政策のための増税を国民に強いなければならないという思いがあるからだろう。
安保関連3文書の改定を閣議決定したあとの記者会見で、岸田首相は「防衛力を5年かけて抜本的に増強するために、毎年4兆円の安定財源が必要で、そのうち3兆円は歳出改革で賄うが、あと1兆円は税負担をお願いしたい」という趣旨の発言をした。そして、歳出改革で防衛費を捻出するための財源確保法を6月16日の参議院本会議で成立させた。
しかし、どのような歳出改革をして財源を確保するのかは、全く見通しがついていない。増税にしても、法人、所得、たばこの3税を引き上げる方針を決めているが、実施時期については「2024年以降の適切な時期」として判断を先送りした。
さらに、解散総選挙が近いという観測から、早期増税の否定を求める声が与党内で強まったため、6月16日に閣議決定された経済財政運営の「骨太の方針」には、「2025年以降」の増税を印象づけるような文言が盛り込まれた。
だが、このような姑息なことをしても、財源確保法が増税を前提とするのは明白である。それが成立した以上、やがて増税を持ち出されることを、われわれ国民は覚悟しておかねばならないだろう。
所得に占める税金や社会保険料などの負担割合を示す「国民負担率」は47.5%にもおよんでいる。どれだけ国民生活を圧迫し景気を冷やせば気が済むのか。軍拡路線をいとわず、財務省の言いなりになる政権を国民が存続させる限り、税の重さを耐え忍んでいくしかないのかもしれない。
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image by: 首相官邸








