精神科病院での「身体拘束」問題。硬直した議論を進めるためには?

 

これらの発言にも注目が集まるが、東京新聞は発言以外の補足説明で山崎会長を「精神科病院を束ねるドン」「22年5月の厚労省の私的検討会に突如、参考人として出席し、議論の風向きを変えるなど影響力が大きい」「安倍晋三元首相と親しかったことでも知られる」と伝えた。

インタビュー内容の記事の冒頭では「日精協の会議室。山崎会長は予定より10分遅れて現れ、インタビューが始まった」という。これらの描写はインタビュー内容と相まってネガティブな人物像を作り上げられてしまう。

記事を掲載した「こちら特報部」は、従来の硬派なスタイルのインタビューではなく、それらの描写も含めより立体的に事実を浮かび上がらせようとするのが狙いでもあり、この手法・表現方法による空気感には賛否があるだろう。精神医療というシビアな問題を真剣に考えようとする人、私も含め、そのエネルギーを対立に煽らないことだけは留意してほしいと思う。

私自身の経験からは、日本の精神科病院がこの組織、このリーダーのもとで守られているのと同時に、議論が硬直している実態も導いているように思う。

数年前、私の記事に「日精協の存在」が立ちはだかったケースがあった。精神科病院の入院の長期化を解消しようと奮闘し、実際に社会復帰のプログラムとともに解消に成功したある精神科病院についてのレポートに対し、その病院のトップが「掲載をやめてほしい」との要望があった。聞くと「今は日精協から変な目で見られたくない」のが理由で、山崎会長への配慮をにじませた。

その後、山崎会長は機関誌に部下の発言を引用し「(患者への対応のため)精神科医にも拳銃を持たせてくれ」(2018年)で物議を醸し、一躍有名になるが、ここから議論は進まず、山崎会長もまだまだ意気軒高のようだ。

その元気さがまだあり、そして精神科病院の将来を思う気持ちが強いのであれば、是非、社会活動の在り方、地域復帰の方策を、私のようなソーシャルワークに従事し、社会を変えなければいけないと真剣に考える人たちと一緒に話していくのはいかがだろう。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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