日米台vs中国の戦争は本当に起きるのか?「情報ピラミッド」に洗脳されるな
New York, NY - January 7, 2020: Former Vice President & Democratic hopeful Joe Biden made foreign policy statement at Current on Pier 59
アメリカの意図
次にアメリカの意図を考えてみましょう。
アメリカは、中国との戦争を望んでいるのでしょうか?アメリカは、中国との戦争を望んでいません。なぜわかるのでしょうか?
もしアメリカが戦争を望んでいるのなら、それを簡単に起こす方法があります。そう、蔡英文さんに「独立宣言」をさせるのです。その際、「独立を宣言すれば、アメリカは即座に承認する。中国が侵攻してきても米軍が台湾を守る。恐れず独立宣言をするように!」といえばいい。
ところが、アメリカは、台湾の独立に反対しています。現状G7の「中国、台湾政策」の根本はなんでしょうか?
・台湾の独立は認めない
・しかし、中国による武力侵攻も認めない
です。要するに、「現状維持で行きましょう」ということ。一つ証拠を挙げておきましょう。「G7広島サミット」の「首脳共同声明」に以下のような文があります。
<我々は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場(表明された「一つの中国政策」を含む)に変更はない。我々は、両岸問題の平和的解決を促す>
この「一つの中国政策」というのは、要するに中国と台湾は「一つの国」という意味です。だから日本も欧米も、事実として台湾の独立を認めていません。
では、日本と欧米は何に反対しているのでしょうか?「武力侵攻」に反対しているのです。これが「事実」です。
ちなみに、私個人の意見を聞かれれば、台湾が将来独立を勝ち取ることを願っています。しかし、ここでは、「各国政府レベル」の話をしています。アメリカは、G7広島サミットがあった今年5月時点でも、「一つの中国政策」を支持している。
もしアメリカ(とバックにいるとされる軍産複合体)が戦争を望むなら、反中親米の蔡英文さんがいるうちに「独立宣言」をさせるでしょう。それで、確実に戦争がはじまります。しかし、実際のアメリカは、戦争をしないように尽力しているのがわかるのです。
アメリカ「対中戦略」の本質
アメリカの対中戦略の本質を知っておきましょう。
バイデンが大統領になったとき、アジアの「バランス・オブ・パワー」は崩れていました。中国が突出して強い状況だった。こういう状況では、戦争の可能性が高まります。つまり中国が、「台湾に侵攻しても楽勝だ」と考え、実際に行動を起こす可能性がある。そこでバイデン政権はどうしたのでしょうか?
・クアッド(日本、アメリカ、インド、オーストラリア)を強化した
・AUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリアの同盟)を立ち上げた
・IPEF(インド太平洋経済枠組み)を立ち上げた
・民主主義サミット(109の国と2つの地域が参加)を立ち上げた
・トランプ時代悪化していたNATOとの関係を修復し、対ロシアだったNATOを「対中」にもシフトさせた
・日米関係を改善させた
・トランプ時代悪化していた日韓関係を改善させた
これらすべての動きは、崩れていたアジアの「バランス・オブ・パワー」を回復させるための動きです。そして、中国包囲網が着々と築かれ、中国が「動きにくい状態」が生まれてきたのです。
ちなみに、「反中国包囲網」というと「物騒」な感じがします。しかし、実際には「バランス・オブ・パワー」を回復させ、【 リアルな戦争を回避するため 】の動きなのです。バイデン政権の動きを丁寧に追って見てみれば、そこに「戦争を起こそうとする軍産複合体の意図」は見えてきません。むしろ、はっきりと「戦争を起こさない政策」をしています。
「軍産複合体を儲けさせるために、アメリカ政府は煽る」
こういう物事を極めて単純化した考え方、私は中国サイドから流され、かなり多くの人が信じ込まされているのだと思います。
情報ピラミッド、使用上の注意点
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