捜査も会見も突然中止。木原誠二官房副長官の妻「元夫不審死事件」をめぐる“忖度とタレ込み”の裏

 

二階俊博氏の「今のうちに別れておけ」発言が意味すること

警視庁はY氏のこの供述により他殺の可能性が高まったとして、特命捜査対策室に30人以上の精鋭を集めて内偵捜査を進め、18年10月、木原誠二氏の自宅を家宅捜索し、X子さんに任意同行を求めた。

木原氏とX子さんは生後間もない男児がいることを理由にいったん拒否したが、その後、X子さんが出頭。事件当日、Y氏に連絡したことを否定し、「事件には関与していません」「記憶にありません」「わかりません」と繰り返したという。

ところが、その後、事態は一変する。安田さんの父は、18年11月、自宅にやって来た捜査員の一人から意外な言葉を聞いた。「事件から外されることになった」。それから間もなく、警察に呼び出され捜査の縮小を告げられた。現在、X子さんは不審死事件の被疑者とされてはいないという。

逮捕寸前まで捜査が進み、突然、幕引きとなったのである。通常はありえないことだ。2015年6月に、当時の安倍首相と懇意だったTBSワシントン支局長、山口敬之氏が、準強姦罪の容疑で高輪署員に逮捕される寸前、中村格警視庁刑事部長(のちの警察庁長官)のツルの一声で、無罪放免になったことがあった。政治の力が働いたのは容易に想像できたが、X子さんの場合はどうだったのか。木原氏を忖度し、警察サイドが捜査を断念したということはなかったのだろうか。

週刊文春は、木原氏の愛人、A子さんが知人に話している音声を公開した。そのなかで、A子さんは、家宅捜索が入り「俺がいなくなったらすぐ連行される」と木原氏が言っていた事実を明かしている。木原氏の妻であるがゆえに連行を免れていると愛人に漏らしていたのだ。

これに関連して、記事にはきわめて重要な事実が書かれている。当時の二階俊博幹事長が家宅捜索などの事実を知り、木原氏に対し「今のうちに別れておけ」と離縁を促したというのである。これは何を意味するのか。

現首相、岸田文雄氏が自民党政調会長だった2018年当時、木原氏は政調会の副会長だった。と同時に、二階幹事長のもとで情報調査局長も兼ねていた。

情報調査局は、具体的な業務内容が一般に公開されていない。しかし、党に関係する情報については、首相直轄の諜報機関「内閣情報調査室」から入ってくるルートがあるはずである。

内閣情報調査室のトップは内閣情報官だ。このポストには警察庁警備公安畑のエリートが、創設以来、起用されている。2011年12月から2019年9月までの長期にわたって内閣情報官をつとめたのが北村滋氏で、木原氏の自宅にガサ入れがあった時期も在任中だった。

また、内閣情報官として北村氏の先輩にあたる杉田和博氏は第2次安倍政権が発足すると同時に内閣官房副長官に就任、2021年10月まで9年間もつとめている。

つまり、杉田・北村という警察官僚コンビが、安倍政権のもと、異例の長期間にわたって、この国の機密情報をコントロールしてきたのである。当然、政治家に対する警察の捜査情報は全て入ってくるだろう。党の要職にある木原氏の妻が容疑者として調べられているということになれば、危機管理上、自民党情報調査局に知らせて善後策を練るよう促すに違いない。

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