捜査も会見も突然中止。木原誠二官房副長官の妻「元夫不審死事件」をめぐる“忖度とタレ込み”の裏

 

元夫の父親が記者会見をとりやめた理由

官邸、自民党本部、警察、検察が、この件について当時、どのようにやり取りしたのか、あるいは没交渉だったのかは全くわからない。推測の材料となるのは文春の記事に載った捜査員の声のみだ。

文春取材班は、安田さんの不審死事件の捜査に関わった10人を超す捜査関係者を訪ね歩いたという。そのうちの1人が話した中身を、以下に記事から抜粋する。

「(Y氏の)アゴ(供述)はあっても、それを支える物的証拠が少なかった。これで逮捕したら自民党がめちゃくちゃ大変なことになる。一般人よりもハードルが上がった」

「国の政治がおかしくなっちゃう。話が大きすぎる。自民党を敵に回すよ。最終的には東京地検の意見を受けて、警察庁が『やめろ』という話。GOを出すときは当然警視総監の許可もいる。普通のその辺の国会議員だったらまだしも木原だよ、相手は…」

一般人なら逮捕されるケースだが、捜査当局が自主規制して幕を引いたと聞こえる。だとしたら、捜査の公平性が疑われるのは当然だ。

安田さんの父親が記者会見をとりやめた理由はよくわからない。しかし、警察の要請に応じたとみるのが自然だ。安田さんの父が文春に話した内容、すなわち上からの命令で捜査員が泣く泣く捜査の継続をあきらめたことが語られるのは警察として不都合であるに違いない。

警察庁の露木康浩長官は「証拠上、事件性が認められないと警視庁が明らかにしている」と説明し、文春の報道を否定した。木原官房副長官は週刊文春の発行元の文藝春秋社や、記事の関係者を刑事告発する意向をちらつかせている。

新聞、テレビなど記者クラブに所属するメディア各社が、この件を報じようとしないのは、政治部は官邸に気を遣い、社会部記者は警察や検察の機嫌を損ねたくないからだろう。

そもそもこうしたメディアは「客観報道主義」をタテマエとしているが、その実態は、警察、検察、役所、政府高官といった「権威」「権力」からの情報の垂れ流しである。“官製情報”をいかに早く世間に伝えるかで特ダネ競争に明け暮れ、独自調査にもとづき自社や記者の責任において記事を掲載することを恐れる。名誉毀損などで損害賠償訴訟を起こされた場合に逃げ道がないからだ。

しかし、「権威」「権力」に属さない人であろうとも、メディア各社が集合する記者会見の場で、世間的に関心の高い事柄について話した内容は、“誰それがこう語った”という形で客観的記述がしやすい。週刊誌が先行したジャニー喜多川氏の性暴力報道も、被害者の記者会見があって初めて、主要メディアの後追いが始まった。安田さんの不審死事件についてもそうなる可能性が高かった。

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