ヒトラーはオカルト好きという伝承がある為にそんな印象があるのですが、史実は違います。オカルト好きだったのはヒトラーではなく、SS(親衛隊)指導者だったハインリヒ・ヒムラーでした。
むしろ、ヒトラーはリアリストだったのです。それを物語るエピソードがあります。独ソ戦争の最中、ドイツ国防軍はソビエト領奥深く侵攻し、バクー地方の油田を奪おうとしました。当時のソ連は国内の石油需要をバクー油田に依存しており、バクー油田を奪えばソ連は戦争継続が不可能になる、とヒトラーは考えたのでした。
作戦は順調に進み、ドイツ国防軍は快進撃を続けます。そんなある日、ヒトラーの幕僚で国防軍作戦本部長であったアルフレート・ヨードルが吉報を伝えました。国防軍の山岳部隊がコーカサス山脈にあるソ連最高峰(標高5,642メートル)のエルブルス山の登頂に成功した、という報告でした。
登山愛好家のヨードルは快挙だと思い、ヒトラーを喜ばせようとしたのですが、案に相違してヒトラーは激怒しました。この非常時に山登りにうつつを抜かしておる将兵がおるとは、と怒り心頭に発します。ヨードルはしどろもどろになりながら、エルブルス山はソ連最高峰であり、その征服に成功したというのはソ連征服を象徴する出来事です、と答えました。
ヒトラーは、ソ連征服はソ連を征服すればよい、山など征服する必要がどこにある、と問いかけます。ヨードルは、古来よりそこに山があるからと申します、と答えました。なるほど、そこに山はあるだろう、だがそこに石油はあるのか、ソ連軍陣地はあるのか、とヒトラーは怒りを増長させ、登頂した将兵を軍法会議にかけろと命じました。
このエピソードもそうですが、ヒトラーは第2次世界大戦を通じて、「戦争経済」という言葉を繰り返します。石油、石炭、鉄鉱石といった資源を奪うことを軍事作戦上の優先事項にしました。ソ連侵攻の際もモスクワ攻略よりウクライナの奪取を優先させます。幕僚たちはモスクワ陥落が先です、と強く進言しましたがヒトラーは拒絶しました。
将軍たちは戦争経済をわかっておらん、と批難もしました。どこまでも、資源に拘ったリアリストの一面があったのです。そんなヒトラーとインデイは、第3作、『最後の聖戦』で対面しましたね。聖杯を巡る冒険譚でした。
今作で終了とは寂しいですが、ハリソン・フォードの奮闘には感激しました。
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