政府や官公庁がしていることを見聞きして、国家権力が必ずしも正義とは言えないと感じることはないでしょうか。森友・加計問題について「各省庁は暴力団と同じことやってる」と語った実業家・藤木幸夫さんの言葉を紹介するのは、評論家の佐高信さんです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、自公連立の岸田政権や官公庁が権力を笠に着て反社会的なことをしていると指摘。佐高さん自身は、経団連をも「反社」と規定しているとその理由を示し、「暴力団だけが反社」ではない現状を暴いています。
どっちが「反社」か?
反社会的勢力のことを略して「反社」と言う。ヤクザのことである。しかし、私には政府や自民党の方がよほど「反社」ではないかと思う時がある。原発の汚染水をそのまま流すことなど考えれば、自公連立の岸田政権の方がずっと反社会的勢力だろう。
そんな思いもこめてか、「ハマのドン」の藤木幸夫は「不敬罪昔皇室今官邸」という川柳をつくった。松原文枝の『ハマのドン』(集英社新書)によれば、そんな藤木に2009年に発足した民主党の鳩山(由紀夫)内閣で国土交通大臣となった前原誠司がストレートに尋ねた。
「何を聞いても怒りせんか」もじもじしながら、こう前提してだったが、「港で働く人とこういう人とはどういう関係ですか」と頬に指でキズをつくりながら問いかけたのである。
藤木は答えた。
「あんた、よく聞いたよね。偉いよ。男の集団というのはね、必ず共通の娯楽があると。これが丁半なんだ。だって、みんな新聞読むわけじゃない。テレビなんかあるわけじゃない。娯楽はお椀とサイコロなんだ。じゃないと人が集まらないんだ。固いこと言ってたんじゃ。そのかわりプロは入れてないんです」
藤木の父親の幸太郎は港湾事業を通じて山口組三代目の田岡一雄と親交があり、田岡に山口組と手を切らせるために理事長の椅子を譲ろうとした。3日も経たずに田岡が来て言った。「田岡一雄としては私のために旅に出てるのが百何人います。それが帰って来たら」無期懲役もいるのだから、「帰って来たら」は引き受けられないということである。
森友・加計問題に触れては藤木はこう言ったとか。
「各省庁は暴力団と同じことやってるじゃない、権力で。ある人の考え一つに皆が忠実に従う。従わなかったらえらいリンチが陰にある。『目に見える刺青』『目に見えない刺青』で、私なんか見ててまったく同じだもん。国交省しかり、文部省しかり。みんな親分がいて、悪いことやってるじゃない。嘘つけって言われたら、嘘ついてるじゃない。あいつらは国家権力というやつを笠に着てやってる。ヤクザの世界よりか醜いよ」
藤木がつくった「FMヨコハマ」では消費者金融のCMを流さない。ラジオは学生たちが勉強したりしながら「ながら聴取」をすることが多い。その時、電話一本ですぐにお金が借りられるとなったら、電話してしまうだろう。「私が社長でいるうちは絶対にダメだ」こう言って藤木はシャットアウトした。
そのサラ金の雄、武富士を経団連はメンバーにした。武富士のあくどさが発覚しても、経団連は除名しなかった。以来、私は経団連を「反社」と規定している。「反社は本当に反社なのか」という問いかけを私は手放したくない。
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