カネの流れ巡り二階氏に異例の強い姿勢を示した岸田氏
ここでふれておきたいのは、河井事件についての岸田首相の姿勢である。19年参院選当時、政調会長だった岸田氏は、溝手氏が所属していた派閥「宏池会」の領袖であり、当然のことながら、河井案里氏の参院選出馬には抵抗した。しかし安倍首相はかねてから岸田氏に冷たい二階幹事長を味方につけ、強硬に案里氏を公認候補者として押し込んだため、岸田氏は泣く泣く了承した経緯がある。
その悔しさが表れたのが、党広島県連会長として2021年5月12日、二階幹事長と会談したさいの、「党本部から河井案里、克行夫妻の陣営に渡った1億5000万円の使途を明らかにし国民に説明してほしい」という申し入れだった。
同年秋の党総裁選への立候補を視野に入れ、「私という存在をないがしろにしてもらっては困る」とばかり、岸田氏としては異例の強い姿勢を示したものだった。
その後、念願の権力の座に就いた岸田首相は、河井陣営に渡った資金について徹底調査を命じることのできる立場でありながら、それをしてこなかった。首相にさえなれば、もう過去のことはどうでもよいということなのだろうか。
官房機密費や政策活動費といった特権的な秘密資金が動いたとしても、その原資は国民の血税である。2億1700万円にまつわる真相を闇に葬ることは許されない。
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