原資は税金。河井メモ「安倍スガ二階甘利」で判った大規模買収の汚いカネを工面した面々

 

安倍氏の意向が強く働いた自民党の案里氏擁立

政党交付金という多額の税金が入る各政党本部。そこから「政策活動費」などの名目で所属議員に資金が配られる。政治団体の収支は報告書に記載しなければならないが、個人向けの「政策活動費」には使途を公表する義務がない。

二階幹事長に流れた資金は、約5年にわたった在任期間中、計約50億円にのぼる。それがどう使われたのか総務省も、国税当局も把握していない。「幹事長3300」の原資などいくらでも都合ができるのだ。

菅氏は、「官房機密費からお金を出したということはないか」という問いに「ない」と断言した。

内閣官房機密費。何に使おうが官房長官しだい。領収書いらずで、会計検査院もノータッチ。菅氏が官房長官だった7年8か月の間に、自らに支出した「政策推進費」は約86億8000万円にものぼる。

小渕政権で官房長官をつとめた野中広務氏は、官邸の金庫から毎月、首相に1000万円、衆院国対委員長と参院幹事長にそれぞれ500万円、首相経験者には盆暮れに100万円ずつ渡していたという。「総理2800 すがっち500」も、この手の資金だった可能性がある。

いずれにしても、首相と官房長官、幹事長が一致して河井案里氏を応援していたのは間違いないようだ。そうでなければ、同じ19年の参院選広島選挙区に出た自民党ベテラン、溝手顕正候補へ支出された1500万円の10倍以上もの選挙資金が提供されるはずはあるまい。逆に言うなら、この三人が了解していさえすれば、資金の使い道について誰も文句を言える者がいないということだ。

自民党は1億5000万円について、案里氏の陣営が広報紙を広島県内に複数回、配るための費用だったなどと主張していたが、それほど多額を要するとは考えられず、全く説得力はない。

それに加えて、当時の首相、官房長官、幹事長らが個々に、ひそかに現金を渡していた事実を、「メモ魔」と呼ばれる河井氏が書き残していたと推測するのが妥当だろう。

19年の参院広島選挙区の戦いは熾烈だった。前回(2013年)の同選挙区では、自民党の候補者が溝手顕正氏だけだったため、2位当選者の得票の2倍をはるかにこえる圧倒的大差で勝った。19年は「自民党で2議席独占を」という名目のもと、そこに河井案里氏が割って入ったため、同じ党でしのぎを削ることになった。溝手氏はあえなく落選した。

無理を承知で、広島県議だった案里氏を自民党が擁立したのは、安倍首相の意向が強く働いたからだ。安倍氏は溝手氏の「(安倍氏は)もう過去の人」発言(2012年)など過去の言動から、溝手氏を嫌っていた。その溝手氏が安倍一強といわれる政治情勢のなかで、楽々と選挙に当選し、参院議員会長におさまっているのが許せなかったのではないか。

案里氏を絶対に当選させるという安倍政権中枢の思いが、「総理2800 すがっち500 幹事長3300 甘利100」から伝わってくる。

自民党支持層の票を奪い合ったあの選挙。県議、市議、町議、市長、町長らに集票活動を依頼するため、克行氏がカネを配ってまわった。東京地裁の判決で、河井克行氏は100人に計約2871万円を提供したと認定されたが、これはあくまで証拠、証言によって裏付けられただけの数字にすぎない。県議選とは違い、これまで案里氏と関わりのなかった地方議員にも動いてもらわなければならない河井夫妻にとって、政権中枢から降ってくる大枚の資金は、ゴールめざして馬を奮い立たせるムチのように感じたのではないだろうか。

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