ジャニー喜多川の卑劣。敵視するジャーナリストへ長期にわたり「報復」の衝撃事実

 

そのような中で、のぞみ総合法律事務所の矢田次男弁護士が暗躍し始めます。週刊文春がデマを流してる、それはもう二次被害であり、後追いをすれば訴訟も辞さないという脅しがなされるのでした。のぞみ総合法律事務所サイドに付いたのは、全テレビ局、全ラジオ局、全新聞社、全通信社に文春を除く全雑誌です。のちに文春も途中で離脱した時期があったので、まぁ、出版社っていうのは意外にご都合主義なのですが、それでも、この矢田弁護士はその後、TOKIOの山口さんが起こしたスキャンダルでの最初の謝罪会見で、みずからマイクを握って司会をして、自爆していくのですが、まぁ、世の中の無常と因果を感じざるを得ませんでした。(※編集部註:弁護士事務所の名称に一部誤りがあり修正いたしました。関係者各位に深くお詫びを申し上げます)

あとは東京スポーツでしょうか、実はもともとジャニーズ事務所から出入り禁止処分を受けていたゆえに、週刊文春の記事をそのまま載せるという形での報道が可能でした。ただ、積極的に取材をしたわけではなく、週刊文春やニューヨークタイムズの記事をそのまま載せるという形だったと記憶しています。当時の担当は延一臣さん、のちの私の連載の担当でもありましたが、正義感のある良い記者でした。週刊文春は、芸能担当の中村竜太郎さんが担当していたと思いますが、それでも何人かいる担当者のうちのひとりでしたね。

私が取材を開始した頃は、ちょうど週刊文春は、ジャニーズ事務所と裁判になることを想定し、補強材料が欲しかったのだと思います。当時の文春は日本社会では圧倒的に孤立し、同業のメディアからも、広告代理店の電通からも追い込まれていましたからね。島田真さん(のちの編集長)から助けてほしいと依頼され、そこで、木俣正剛さん(副編集長)や松井清人編集長と話をしたうえで、これは、ニューヨークタイムズの本社を口説いてでも、書かれるべき内容だと考えたのです。文藝春秋の顧問弁護士である喜田村洋一さんの誠実な姿勢もタイムズ本社に好感を与えたと思っています。

個人的には、シムズ特派員の語った言葉が印象的で、それが取材を遂行するにあたっての使命感のようなものになっていったのを思い出します。シムズ特派員曰く、「これは、ジャニー喜多川という人物による『個人的な犯罪』ではなくて、社会全体が許容している『組織的な児童虐待』だ。座視すべきではない」というのです。それは確かにその通りでした。

取材すればするほど、心の痛む事実が明らかになってきました。何十件もの児童虐待が行われ、誰もがそれに気づいているのに、まさか広告代理店やテレビ局が共犯となって、その後、20年以上もの報復が続くとは当時は微塵も考えませんでした。彼らのやり口は巧妙です。ジャニーズ問題とはまったく無関係のことを持ち出して私たちジャーナリストを攻撃し、弁護士や同業者からの信用棄損と人格攻撃によって、社会的に抹殺していくのです。この国のメディアの醜悪な限界を知った瞬間でした。

仮に、性的な関係だけならば、同意さえあれば、それは当人同士の問題であり、あるいは、民事事案であり、ニューヨークタイムズが取材することもなかったでしょう。なにしろ、当時の日本にはLGBTという概念すらなく、雑誌やスポーツ紙の表紙には平気で「ホモ疑惑」などと書かれている時代でしたから。

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