ジャニーズ事務所に茶番会見を「良し」とさせたもの
メディアが本来の役割を果たさなくなった状況は極めて深刻ですが、ジャニーズ事務所が茶番会見を仕掛ける背景には、お手本があるからです。それは、首相会見や官房長官会見を始めとした政府会見がことごとく茶番だからです。官房長官会見でNGリストの存在を問われた松野博一官房長官は、その存在を否定しましたが、政府の会見ではもう長いこと茶番会見が当たり前になっていることは誰もが知っています。
「記者会見」とは名ばかりの、「仲間内での台本の読み合わせ」をしているに過ぎません。厳しい質問をする記者は最初から排除されるか、参加できてもほとんど指名されることはありません。こんな状態をいつまでも放置しているから、まさに今回のジャニーズ会見のように「鯛は頭から腐る」という現象がいたるところで起きるようになってしまったのだと思います。
国会も似たような状況で、もう長いこと機能不全に陥っています。質問には事前通告が求められ、首相をはじめとした各閣僚も、官僚があらかじめ準備した答弁書をただ朗読する場になっており、本来の双方向での議論は行われていません。答えたくないことには一切答えようとせず、論点のすり替え、トーン・ポリシング、答弁拒否が当たり前になってしまっています。
ジャニーズ事務所が幼稚な茶番会見を仕掛けたのは、このような悪しき手本を見習ったに過ぎない、という見方もできるでしょう。
問われるべきジャニーズ事務所を利用してきた側の責任
ジャニーズ問題については、自分たちの利益のために彼らを利用してきた側についても、認識と関与の度合いに応じた責任が問われねばならないと思います。政府、政党、大手メディア、エンタメ業界、スポンサー企業etc.多くの人たちが、これまで彼らを重宝してきたのは事実です。
ここにきて、スポンサー離れも加速していますが、問題が表に出るまでは散々利用しておきながら、表に出たとたんに契約解除する、というのもどうかと思います。ネスレの日本法人のように、ジャニーズの噂を知って最初から利用しなかったという企業も存在しています。利用して来た側としなかった側との差はどこにあったのか、ということは重要な視点です。ネスレに関しては、外資系ということもあって、事業への向き合い方や、ガバナンスのスタイル、コンプライアンスに対する考え方が根底から違っているということもあるでしょうが、高岡浩三氏という元経営トップの倫理観やリスク管理意識という要素も大きかったのではないかと思います。
経済界を代表して、経団連会長の十倉雅和氏や、経済同友会代表幹事の新浪剛史氏も、ジャニーズ事務所の所業を非難する発言をしています。しかし、彼等の発言を必ずしも素直に受け止められない向きも多いのではないでしょうか。他人や他社のことについて、ご意見番よろしく後付けでもっともらしいことを言うのは誰にでもできます(この際、自分のことは棚に上げます・笑)。しかし、企業側も、見て見ないふりをしながらジャニーズを利用して来たのであれば同罪です。さらに、経団連や経済同友会などの経済団体には、日本経済を凋落させ、日本社会を疲弊させて今のような状態にした大きな責任があります。
また、サントリーの経営トップという立場での新浪氏には、安倍政権時代の桜を見る会での酒類無償提供問題でその企業体質が問われた経緯があります。「45歳定年説」や、最近のマイナ保険証に関する暴言でも、さまざまな物議を醸しており、「利己的なサラリーマン経営者」という印象が拭えません。パワハラ体質も知られていて、 10月8日のデイリー新潮の記事 では、部下に携帯を投げつけて怪我をさせていたというローソン社長時代のエピソードも紹介されています。そのような人物から上から目線でとやかく言われても説得力がありません。
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