タチの悪い茶番劇。柿沢法務副大臣「予算委員会を出席拒否」のクサすぎる三文芝居

 

江東区長選での柿沢の動きに怒り心頭だった萩生田光一

柿沢氏が国会への出席要請に応じず、説明責任を果たさないとなれば、大問題になるのはわかり切ったこと。にもかかわらず、大臣に了解を得ることなく法務省の事務方が、独断専行するようなことがあるだろうか。「法相に相談せず柿沢氏を出席させることは適当でないと判断した」と法務省側は言い訳するが、とうてい納得できるものではない。

辞表を提出するのはべつに委員会開催中ではなく、終了後でもいい。それをあえて、大臣や首相があずかり知らぬ間に、と言える委員会の最中に出させ、事務方が責任をかぶる形で答弁回避の態勢を整えた、とは考えられないだろうか。

むろん、柿沢氏が予算委に出席したくないため、法務省のしかるべき幹部に泣きついたという見方もできるだろう。しかし、法務副大臣に就任したのは今年9月15日と日が浅く、法務官僚が柿沢氏個人のためにそこまでするかという疑問が残る。

はっきり言って、柿沢氏はさほどの大物ではない。野党を渡り歩いたすえ、無所属となり、2021年の衆院選で当選した後、自民党に追加公認された。いわば入党して間がない新参者である。

だが、麻布中学校・高等学校の先輩にあたる谷垣禎一氏(元自民党総裁)のコネにより、谷垣グループの遠藤利明・前総務会長が推薦して自民党入りしたいきさつがある。早々に得た副大臣ポストも、そうした関係を背景とした異例の起用によるものだったといえよう。それだけに自民党内には「ちょっと前まで我が党を批判していたのに」と柿沢氏に反感を持つ議員も多いようだ。

ではなぜ、岸田政権、あるいは法務省は柿沢氏を委員会に出席させたくないのだろうか。

岸田内閣の支持率が危険水域にまで達しており、柿沢氏が委員会で追及されることによりダメージが広がるのを懸念している面はあるだろう。これが岸田政権サイドの都合だ。

法務省になにがしかの損得勘定があるとすれば、柿沢氏に対する検察の捜査とのからみが考えられる。

柿沢氏が関与したといわれる江東区長選挙で何が起きたかを見てみよう。自民党は、元区長の息子で都議だった山崎一輝氏を擁立した。衆院東京15区すなわち江東区選出の柿沢氏は木村弥生氏を支援した。木村氏は新人とはいえ、かつて自民党の衆議院議員を2期つとめている。選挙は保守分裂の様相を呈し、木村氏が山崎氏に13,000票差をつけて競り勝った。

木村氏を裏で支えた柿沢氏の動きに怒り心頭だったのが、現自民党政調会長の萩生田光一氏だ。もともと、柿沢氏に対して苦々しい思いがある。

2021年の衆院選。萩生田氏が幹部をつとめる自民党東京都連は、IR汚職事件で自民党を離党した秋元司氏に替わる候補者として元衆院議員の今村洋史氏を公認申請した。ところがそこに柿沢氏が自民党公認を求めて入り込んできたため、自民党本部は柿沢氏を今村氏とともに推薦し、当選した方を追加公認することにした。党本部の決定の背後に、谷垣・元自民党総裁と当時の遠藤選対委員長の連携があったことは先述した通りである。

今村氏のタスキを用意して政見放送も一緒に撮ったという思いがある萩生田氏は、街頭演説などで遠藤選対委員長への怒りをぶちまけた。「江東区のことは江東区の人たちが決める。山形県の政治家(遠藤氏)に東京や江東区の何がわかるんですか」「この選挙が終わったらきっちりけじめつけてやる。そんな思いでこの戦いを進めているところであります」

結局、外相を務めた父・弘治氏以来の地盤を東京15区に持つ柿沢氏が当選し、その後、自民党から追加公認された。しかし、萩生田氏らの反対で柿沢氏は次期衆院選の候補とみなされる東京15区の支部長には選ばれていない。そこに都連会長である萩生田氏のこだわりが見てとれる。

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