仲介努力を阻むイスラエル側の頑なな姿勢と強硬な立場
イスラエルは何とかアラブ諸国とイランの仲たがいを画策しているようですが、すでにイエメンのフーシー派によるイスラエル権益への攻撃をアラブ諸国が黙認しており、イランの革命防衛隊が直接的な介入を思いとどまり、かつ影響力を持つレバノンのヒズボラにもまだ自制をさせていることをサウジアラビア王国などは評価しているとの情報があるため、何らかの形でアラブ権益に傷をつけるような事態がイスラエルによって引き起こされた場合は、例えそれが偶発的なものであったとしても、一気に地域紛争の勃発の引き金になりかねないと言えます。
その最悪の事態に備えて、EUはすでに地中海沿岸諸国の防衛を強化する方針を示しているようですし、トルコも戦火の飛び火を恐れて国内の防衛レベルを高めだしています。
余談ですが、ちなみにトルコの場合、戦争拡大に国際世論の目が集中しだしたら、クルド人勢力掃討をこっそりと行うのではないかと思うため、地域における紛争が自ずと拡大することも予想され、中東・地中海地域における安全保障環境への大きな脅威となりかねないと懸念します。
そのような最悪の事態を防ぐために調停努力は水面下で続けられていますが、イスラエル側の頑なな姿勢と強硬な立場は、効果的な調停・仲介努力を阻みつつあり、その上、周辺国がまだ本気で事態の鎮静化に乗り出してきていない感があることから、事態の早期解決は、正直なところ、非常に困難であると言えます。
それはつまり、ガザ市民のさらなる犠牲を意味することとなり、それをどうすることもできない無力感に苛まれることになります。
それゆえメディアの関心も、各国の関心も、そしてUNの関心も、否応なしにガザでの悲劇に向かうのですが、その間にも、ウクライナを巡る情勢は厳しさを増しています。
究極の2択を迫られるバイデン政権
最近、ゼレンスキー大統領も公に認めていますが、約半年間続いたウクライナによる対ロ反転攻勢は決してうまく行っておらず、いくつかの戦線ではロシアに押し返され、結局、支配地域の奪還がほぼ出来ていないのが現状です。また戦闘において多大な犠牲が出ており、このままでは対ロ戦闘継続も困難な状況のようです。
その報告が明らかになると、欧米諸国とその仲間たちは一様に危機感を表明するものの、これ以上の対ウクライナ支援の継続と拡大は非常に困難な状況です。
最大の支援国アメリカは、予算局長の言葉を引用して「このままでは年内に対ウクライナ支援の財源が底をつく」ことを明らかにし、政府内外でウクライナ支援の迅速な実施と拡充の必要性が叫ばれていますが、(多くの場合、予算獲得のための誇張であるのですが)実はこれが来年大統領選挙を控え、自身の再選もかかる議会の政争の具にされてしまい、議論が進んでいません。
議会共和党は、特にマジョリティを持つ下院で、実際に望んでいるのかどうかは知りませんが、「トランプ政権が掲げた米・メキシコ国境の警備と移民のコントロールが再開され、アメリカを守ることが先決で、その合意無くしては、ウクライナ防衛の議論をすることは許さない」と発言し、民主党がこの提案をのむことは考えられないため、実質的にウクライナ支援の継続をブロックしています。
恐らくこのままではアメリカの対ウクライナ支援は停止し、来年以降は行われないことを意味するため、バイデン政権としては「現時点で出しうる強力な兵器を供与しておく」か「見捨てる」かの2択になってしまいます。
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