イスラエルの「暗殺予告」に仲介国が激怒。終りが見えぬガザ紛争

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全世界の淡い期待をよそに、再び激しい戦闘状態に突入したガザ紛争。昨年2月に開戦したウクライナ戦争も、未だ表立った停戦の兆しが見られないのが現状です。両地域に和平が訪れる日は来るのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、国際社会が紛争の同時発生に歯止めをかけることができなくなった原因を考察。さらにガザとウクライナの現状と今後考えうるさまざまなシナリオについて解説しています。

国際社会に生じた引き返せない「分断」。液状化する和平の基盤

「国際安全保障環境に後戻りできない動きが散見されるようになった」

これはニューヨークから帰国してすぐに行った調停グループの会合で示された共通認識です。

そのベースになっているのは、一つは「イスラエルとハマスの一時戦闘停止と人質交換がついに終焉し、ガザにおける戦闘がより激しさを増して再開されたこと」、そしてもう一つは「ウクライナが対ロ戦において後ろ盾を失いつつある現状」です。

他には「ロシアのサポートを受けた北朝鮮のミサイル技術の著しい向上と核弾頭の縮小化の伸展に伴う北東アジア安全保障環境の変化」や「ミャンマー国軍がついに切った中国人民解放軍との接近というカード」という気になる傾向もあります。

そして最近はほとんど聞かなくなりましたが、常に状況が悪化し続けているスーダンの国内治安やエチオピア国内で継続する紛争(今回は国内で発生した自然災害に対する政府の対応の不在に端を発したもの)も、今後、東アフリカのデリケートな安定を根本から崩し、アフリカ全土に拡大しかねない大きな情勢不安につながりかねないものもあります。

コロナ前までの国際安全保障環境であれば、まだ広義の国際社会による抑止や調整が効いたのかもしれませんが、「ロシアによるウクライナ侵攻以降、完全に国際協調体制が崩れ、代わりに引き返せない分断が生じたこと」と、「マルチフロント(複数の戦端)で紛争・戦争が起きていること」、そして「米ロ・米中という2正面で緊張が高まっていること」、さらには「米欧の連携に隙間風が噴出したこと」などの複数の危機とズレが、各地での紛争の激化の同時発生に歯止めをかけることが出来なくさせています。

国連安全保障理事会の議論も噛み合わず、効果的な抑止と仲介の術がほとんど存在しない中、世界の安全保障環境は、もしかしたら何らかの偶発的な衝突を機に、一気に崩壊する危険性をはらんでいるように見えます。

すでに多数の懸念すべき状況が存在することに触れましたが、特に今、気になるのが、「終わりの見えないイスラエルとハマス、そして周辺国を巻き込みかねない戦い」と「欧米に見捨てられたウクライナが辿る恐怖のシナリオ」です。

まずイスラエルとハマスの戦いの再激化と、紛争の拡大の懸念についてですが、こちらは一時戦闘停止と人質交換によって地域につかの間の休息が訪れ、停止期間も当初の4日間から毎日延長されてきたことでもしかしたらこのまま終結に向けた機運ができるのではないか」と淡い期待が寄せられましたが、その期待は、イスラエル軍によるガザ全域を対象とした空爆の再開と地上部隊のガザ南部への侵攻、そしてハマス側からの1,000発を超えるロケット弾によるイスラエルへの攻撃により、脆くも崩れ去りました。

一時戦闘停止前に予想したように、戦闘は激化し、今ではもう終わりさえ見えない状況になってしまっています。

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