イスラエルの「暗殺予告」に仲介国が激怒。終りが見えぬガザ紛争

 

ウクライナ戦争の早期終結を働きかけ始めている欧州各国

では欧州各国はどうでしょうか?

これまで比較的対ウクライナ支援に積極的だったドイツは、国内の予算論争において、ショルツ首相の気前の良すぎる対ウクライナ支援への非難が飛んでおり、また虎の子のレオパルト2戦車が破壊される様子が伝えられるごとに、ドイツ国内の対ウクライナ支援の停止を求める声が高まっているため、これ以上の支援の継続も危ぶまれています。

フランスは、以前より、ロシアとウクライナに働きかけ、何とか話し合いによる停戦を促す姿勢を取り、その間は武器弾薬の提供を控えているという現状があることと、フランス国内でもこれ以上のウクライナ支援はフランス国民の生活に悪影響を与えるとの声が高まっていることから、今後、拡大することは期待できません。

英国については、ウクライナ支援についてのスタンスをあまり最近は明らかにせず、確実に目がイスラエルに向いているため、確かなことは言い切れませんが、こちらもウクライナへの支援の継続は期待できません。

その元凶となっているのが、「日本でも次第に顕著になってきている食糧安全保障問題に対するウクライナ紛争の影響の拡大」です。

物価の高騰と流通の停滞はずっと起きていることですが、よくクローズアップされるエネルギー資源以上に深刻化しているのが食糧・飼料を巡る物価高騰です。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、世界の穀倉地帯と言われるウクライナの農業は止まり、飼料となるトウモロコシ生産が止まっているため、トウモロコシ価格が暴騰し、各国の畜産酪農部門に大きな痛手となっています(注:トウモロコシ価格の暴騰は、ウクライナのみならず、アメリカなどで広がるバイオエタノール生産供給にトウモロコシが流れていることで生じる供給不足も大きく影響しています)。

ウクライナ支援を行う国とは別に、中国やアフリカ諸国などのロシア派の国々には、ロシアから供給されることでそれほどの混乱はまだ起きていないのは皮肉です。

乳業の経営と運営を圧迫し、畜産農家の経営を圧迫することで、私たちのたんぱく質源がことごとく供給危機に晒されています。

牛乳の生産コストが上がり、肉になる畜産牛の生育が思わしくないことで、食肉の出荷が滞る傾向が、世界各地で見られるようになってきているとの報告がFAOから出されています。

恐れていた食糧危機がもうすぐそこまで来ており、この状況を看過できない欧州各国は、次第にロシア・ウクライナ戦争の早期終結を働きかけ始めています。

顕著になりだしたロシア有利な停戦合意案の存在

その中で最近、顕著になりだしたのがロシア有利な停戦合意案の存在です。

ウクライナはロシアが一方的に編入したウクライナ東南部の4州と、クリミア半島を諦め、その見返りとしてロシアが、ウクライナへの部隊の配備をしないという前提の下、ウクライナのNATO加入のための協議入りを容認するという内容です。

これまでのトーンでは絶対にウクライナが受け入れない内容に思えますが、最近、ロシアとウクライナの高官(ウクライナのサルジーニ統合参謀本部議長と、ロシアのゲラシモフ統合参謀本部議長)が水面下で協議しているとの情報もあり、双方ともその真偽については明確にコメントしていませんが、否定もしないという状態です。

これについてゼレンスキー大統領はコメントしていませんが、否定もしていない背景には、サルジーニ氏の国内での人気が昨今、自らを凌ぐほどのレベルになってきているという現実があり、自らが率いるウクライナ軍が苦境に立たされている現状に終止符を打つべきと考え始めたらしいサルジーニ氏の意向が、ウクライナ市民の意向に近いことが明らかになってきて、無視できない状況というジレンマもあるようです。

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