インスリン恐るべし。発がんリスクも発がん後死亡率も高いというデータ

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糖尿病の人は発がんリスクが高いとされ、がん発症後の死亡率も高く、インスリン注射をしている人の場合には、2年生存率が70歳男性で20%、女性で30%まで落ち込むというデータがあるようです。デンマークでの研究結果を紹介するのは、メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で、糖尿病専門医の江部康二先生。人体に必要不可欠なインスリンも過多になっては恐ろしい事態を引き起こすとして、自身が提唱する「スーパー糖質制限食」の利点を改めて強調しています。

「糖尿病患者は発がん後の死亡率も高い」デンマークの研究

糖尿病患者が、がんになりやすいことに関しては、以前からエビデンスがあります。高血糖に発がんリスクのエビデンスがあるので、糖尿病患者にがんが多いことは想定範囲と言えます。

高血糖があると活性酸素が発生して、酸化ストレスリスクとなるのです。さらに高血糖があると、ブドウ糖がSODなどの抗酸化酵素にへばりついてその作用を邪魔するため、酸化ストレスリスクが増すのです。

さらに、2014年に、「糖尿病患者は発がん後の死亡率も高い」ということが、信頼度の高いデンマークの研究により認識されました(Diabetologia 2014; 57: 927-934)。

(1) 非糖尿病(糖尿病ではない人)
(2) 無投薬糖尿病(糖尿病ではあるが薬物療法を受けていない人)
(3) 経口薬糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬を内服しているもののインスリン注射はしていない人)
(4) インスリン糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬の併用の有無を問わずインスリン注射をしている人)
の4つのグループの分けての研究です。

大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、膀胱がんで、3つの糖尿病群全てで、糖尿病者の死亡率が非糖尿病者より高くなっていました。また、インスリン糖尿病では、それらに加え、直腸がん、肺がん、前立腺がんでの死亡率も高くなっていました。

70歳でがんと診断された2年の糖尿病罹病歴を持つ患者での生存率をモデル計算してみると、がん診断後2年での生存率は、

男性では
(1) 非糖尿病70%
(2) 非インスリン糖尿病(無投薬糖尿病,経口薬糖尿病)60%
(3) インスリン糖尿病20%

女性では
(1) 非糖尿病80%
(2) 非インスリン糖尿病70%
(3) インスリン糖尿病30%

発がん後の死亡率とモデル計算の生存率を検討してみると、インスリン糖尿病が突出して予後が悪いです。高インスリン血症そのものに、発がんリスクのエビデンスがあるのですが、これほど顕著とは、げにインスリン恐るべしです。

また高インスリン血症は、活性酸素を発生させ酸化ストレスリスクとなります。

近年の研究で、高インスリン血症や高血糖による酸化ストレス(生体において酸化反応が抗酸化反応を上まわっている状態)が、発がん、老化、動脈硬化、アルツハイマー病、パーキンソン病などのリスクとなるとされています。

今回のデンマークの研究で、高インスリン血症の発がんリスクが、鮮明に証明されたと言えます。

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