「アメリカの政策的な関心の度合い」に左右される国際社会
ロシアにとって直接的な安全保障上の関心は、ロシアと陸続きで国境を接する16の国々(ウクライナ、ベラルーシ、モンゴル、アゼルバイジャン、北朝鮮、中国、カザフスタン、ジョージア、ラトビア、エストニア、フィンランド、ノルウェー、ポーランド)との力関係です。
国境という意味ではここに海峡を隔ててアメリカ合衆国と日本が加わりますが、海峡の存在は、互いにとって防御壁として存在するため、ランドパワーの直接の脅威としてではなく、別のカテゴリーになることが多くなります。
ロシアは、影響力の拡大という観点から中東やアフリカ、中南米諸国にも手を伸ばしていますが、軍事的なものというよりは、経済的なつながりの構築と強化が主眼であるため、ハードコアな安全保障上の利害では動いていません。
これに対し、シーパワーの典型例とされる英国と米国は、海が自然の要塞として機能するため、影響力拡大のターゲットを遠方に求めやすくなります。
アメリカの場合、カナダとメキシコとは地続きではありますが、両国ともアメリカにとっての国家安全保障上の脅威となるほどの強国ではないため、アメリカは外に目を向けやすくなっています。とはいえ、今、米国内で政争の具になっており、見事にウクライナも煽りを食らったのが“メキシコからの移民の流入はアメリカの国家安全保障上の脅威”という主張の存在ですが(主に共和党)、この場合には傍目には理解できないほどの過剰反応を見ることが出来ます。
このシーパワーの皆さんの特徴をあえて過剰に一般化しますと、他国・他大陸のことにやたらとちょっかいを出したくなります。
口を出し、手を出し、欲しいものは取ってきて、場合によっては自らの考え方や文化的な習慣を置いてきて、押し付けます。ゆえに現地からすると異物として捉えられ、大いに嫌われる対象になりやすいのが特徴です(あえて悪いところばかり見ていますが、シーパワーによる影響力拡大が結果としてグローバル化を進め、私たちの生活を便利にしたのは確かです)。
今、起きている国際社会の分断は、この趣を異にするランドパワーの皆さんと、シーパワーの皆さんがぶつかり争うフロントと、それには巻き込まれず、どちらの利点も享受したいグローバルサウスの皆さんという構図だと表現できるのではないかと思います。
このような分類は、実は少し前まで存在した国際協調時代にもあったのですが、大きく変わったのは、シーパワーの皆さん、特にアメリカが、問題が起きたら、いいか悪いかは横に置いておいて、あちらこちらに直接出て行かなくなったことでしょう。
その結果、関心の度合いがアメリカの政策的な関心の度合いによって差別化され、アメリカに“関係がある”“利害がある”国や地域については大騒ぎしますが、その他については、一応、口は出すが手も金もサポートも出さないという図式が出来上がったのではないかと、若干、強引な気もしないでもないですが、考えています。
それが、イスラエルが絡む問題には国内の議論を二分し、国際世論も二分することを厭わずに介入したり、大嫌いなロシアや中国が何かをすると声を大にして介入したりする半面、アフリカ内で起きていることやアジアの片隅で起きていることには関心を持たず、商業的・経済的な利益の拡大と確保のために、そこに存在する政治・社会における不都合な真実を黙認するか無視するという方針を、アメリカも欧州も、そしてその仲間たちも、今やシーパワー的な側面も持とうとしている中国も、ロシアも選択しています。
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