ウクライナ国内で揺らぎ始めたゼレンスキー大統領への支持
ワシントンを訪問し、バイデン大統領をはじめ、連邦議会の幹部とも面会し、対ウクライナ支援の継続と強化を依頼しましたが、バイデン大統領からの空約束は得られたものの、実質的に予算を握る下院からは支持を得られず、すでに議会がクリスマス休暇に入ったという時期的な不運もあり、対ウクライナ支援の予算が枯渇する前に、その予算の延長も拡大も行われず、実際には打ち止めとなるという事態に直面しています(民主党・共和党の別なく、実際には議会において「ウクライナに対しては、あと1年は持ちこたえられるだけの財政・軍事支援は行ったはず」という認識が広がっているようで、新規・追加の支援には後ろ向きという背景も存在するようです)。
続いてブリュッセルに赴き、EU加盟交渉を開始するという“成果”を得たものの、それは先述のように、ゆうに10年以上かかることから、実際には欧州各国からの支援の打ち切り通告の代わりに、“希望”を持たせるためだけのリップサービスだったのではないかと思われます。
実際には欧州の支援の要のドイツは、国内の予算調整が与野党で困難を極めており、現時点でウクライナに対する追加支援の実施はほぼ不可能な状況と言われていますし、これまでウクライナに寛容だったはずのフランス政府も、ウクライナをヨーロッパとは見なしていないことに加え、ロシアへの配慮から、あまり積極的な支援の輪には加わるつもりはないようです。
そしてUNの場では、安全保障はもちろん、開発や気候変動などの議論が行われる場で、途上国の代表から公然と“ウクライナやイスラエルにシンパシーを表明して湯水のように迅速に支援を提供するのに、もっと多くの人命にかかわる問題に対しての支援には後ろ向きなのはどうなのか”という非難の対象としても使われ始め、これ以上、実効的な支持をウクライナがUNの場で受けることはなさそうな気配です。
極めつけはウクライナ国内でゼレンスキー大統領への支持が揺らいでいます。ウクライナ国民を困難な際にも鼓舞し続ける姿はカリスマとして称えられた時もありましたが、その後、度重なる閣僚や軍幹部の更迭、汚職疑惑などに襲われ、戦線も膠着状態にあることから、その指導力に疑問符が付けられ始めています。
そしてロシアによるウクライナ侵攻以降、武器弾薬はもちろん、政府機能の維持、教育、医療、年金などを維持するために欧米諸国とその仲間たちからの支援が使われていることと、戦争による破壊により実質的に穀物や鉱石などの収入源を失っていることもあり、欧米頼みの国家運営に対する不安と不満の矛先が、プーチン大統領とロシアだけでなく、ゼレンスキー大統領にも向かいつつあると言われています。
自国と自国民を支えるための支援を欧米諸国とその仲間たちから引き出してこれなくなったことで、一旦は延期を提案した来春の大統領選挙を予定通りに実施してゼレンスキーを追い出すべきとの声も、反対派から起きていると言われています。
そして大統領と統合参謀本部議長との確執と権力争いが表ざたになってきたことで、内政上の危機も訪れていると言われています。
国際社会から次第に煙たがられ、国内でも支持基盤の揺らぎが出てくる中、もし欧米諸国とその仲間たちがウクライナ支援から手を退くようなことがあれば、これは確実にウクライナを見捨てることとなり、プーチン大統領による蛮行を、間接的に容認する結果に繋がります。
今のところ、大方の見方は時間がプーチン大統領とロシアの味方となっており、対ウクライナ戦が長引くほど、ロシアは軍事面でも経済面でも体勢を立て直し、ウクライナに対してend gameをしかける可能性が高まるとされています。
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