ジャニーズ、安倍派、統一教会…これまで社会を支配してきた権威・権力が崩れた2023年を総括する

2023.12.28
Tokyo,,Japan,-,May,2018,:,People,Crossing,The,Street
 

あたかも「歴史の転換点」かのように、日本社会にさまざまな問題が噴出した2023年。しかし、それらはすべて約30年前に顕在化していたものであり、「先延ばし」が事態をさらに悪化させたと、政治学者で立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さんは指摘します。今回上久保さんは、「旧ジャニーズ事務所」「旧統一教会」「政治とカネ」という3つの問題を総括。その上で、来るべき2024年を日本にとってどのような年にすべきかを考察しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

ジャニーズ、パー券、統一教会。権力者たちによる「30年前の問題」を先送りしたツケ

2023年は、既存の社会に君臨してきた権威・権力が次々と崩壊した年だったと、後世に語られることになるだろう。例えば、芸能界・メディアを長年にわたって支配してきた「ジャニーズ事務所」が事実上消滅することになった。巨大な新興宗教団体として社会に深く入り込み、政界にも強い影響力を誇ってきた「世界平和統一家庭連合」(以下、旧統一教会)に解散命令が下された。

そして、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反事件が「安倍派」(清和政策研究会)を直撃している。閣僚、党幹部から安倍派議員が完全に外れ、安倍派の副大臣5人、政務官1人も交代した。憲政史上最長の長期政権を築いた安倍晋三元首相の派閥であり、「安倍派支配」と呼ばれる状況が終焉を迎えようとしている。

既存の権威・権力が崩壊したとしても、筆者は日本の将来を悲観はしない。崩壊して空いた大きな穴は、必ず誰かが埋めものだからだ。これまで世に出るチャンスがなかった人たちや、新しい世代が現れてくるだろう。来る2024年は、日本の新しい時代が始まる年になるのかもしれないという希望もある。

しかし、忘れてはならないことがある。これらの既存の権威・権力が引き起こした問題は、実は約30年前にすでに問題となっていたことだということだ。そして、その時に抜本的な解決を避けたことが今日の問題につながり、日本社会の混乱させているのだ。

1962年6月に創業され、田原俊彦、近藤真彦らのスターや「初代ジャニーズ」「フォーリーブス」や「少年隊」「光GENJI」「男闘呼組」「SMAP」「嵐」「TOKIO」などアイドルグループを生み出した日本最大の芸能事務所・ジャニーズ事務所は、今年61年の歴史に終止符を打った。

創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害の問題化によって、解体的見直しを求められる事態となったのだ。23年10月17日、事務所は記者会見し、社名から「ジャニーズ」を消して「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更し、被害者への補償と救済に特化する企業となると発表した。

所属タレントのマネジメントや育成は、近く設立する新会社「STARTO ENTERTAINMENT」が担うことになった。だが、NHKは番組制作を巡り、「出演者に対する性的搾取、性的虐待を排除し、悪質な嫌がらせや差別的または攻撃的な行動を認めない」と明記した「人権尊重ガイドライン」を公表した。そして「第74回NHK紅白歌合戦」の出場者を発表し、近年5、6国が出場していた旧ジャニーズ事務所所属のタレントを選出しなかった。1979年以来44年ぶりの旧ジャニーズ勢不在の紅白となる。

また、民放各社も性加害問題という事実を重くみたスポンサー各社が「ジャニーズ離れ」に動き、タレントの起用などに慎重な姿勢を示すようになっている。

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