ジャニーズ、安倍派、統一教会…これまで社会を支配してきた権威・権力が崩れた2023年を総括する

2023.12.28
 

どや顔で「政治改革に取り組む」という岸田に抱く今さら感

そして、自民党の最大派閥・安倍派の「パーティー券問題」である。安倍派に所属する議員が、パーティー券収入の一部を“裏金化”していた疑惑が浮上し、岸田文雄政権を揺るがす大問題となっている。

松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一党政調会長、高木毅党国会対策委員長、世耕弘成党参院幹事長が更迭された。いわゆる安倍派幹部「5人衆」が、岸田内閣および党執行部から姿を消すことになった。また、疑惑は「二階派」や岸田首相の出身派閥「岸田派」など、党全体に広がりつつある。

だが、岸田政権の内閣支持率は止まらず、各種世論調査では20%台に下落した。内閣の存亡にかかわる「危険水域」とされる領域に入っている。世論は、閣僚の交代だけでは不十分とみており、岸田首相は、年明けのできるだけ早い時期に、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けた改革などを検討するため、新たな組織を立ち上げて、「政治改革」を進める考えを示した。

しかし、何をいまさらという印象を持たざるを得ない。「政治改革」とは、90年代の前半に、「政治とカネ」の問題を解決するために取り組まれたものだ。それから30年間、政治家はいったいなにをやっていたのかということだ。「政治改革」に取り組むと「どや顔」でいわれても、呆れるしかない。

90年代の「政治改革」を振り返ってみよう。1989年、消費税導入やリクルート事件によって自民党への批判が高まり、その対応として、自民党は政治改革推進本部を設置し「政治改革大綱」を発表した。そこでは、自民党政治の問題点を

  1. 政治家個々人の倫理性の欠如
  2. 多額の政治資金とその不透明さ
  3. 不合理な議員定数および選挙制度
  4. わかりにくく非能率的な国会審議
  5. 派閥偏重など硬直した党運営

の5つにまとめ、その解決策を提示した。

ここで重要なのは、自民党政治の問題の多くが「中選挙区制度」の弊害に起因しているとの主張であった。具体的には、中選挙区制によって、1つの選挙区に自民党が複数の候補者を擁立するため、政党本位でなく個人中心の選挙となること。それが政策よりも利益誘導を重視する政治を生み、それが高じて政治腐敗の素地を招いたと指摘したことだ。また、中選挙区制下で与野党の勢力が永年固定化し、政権交代が極めて起こりにくくなり、政治の緊張感が失われ、党内では派閥の公然化と派閥資金の肥大化、議会では政策論議の不在と運営の硬直化を招いたと、厳しく批判していた。

そして、「政治改革大綱」は、その解決策として小選挙区制の導入を基本とした選挙制度の抜本改革を中心とした「政治改革」を断行し、国民本位、政策本位の政党政治を実現する必要があると訴えていた。

「政治改革大綱」が目指した小選挙区制の導入による「政治改革」とは

  1. 多数決原理の導入と政策本位の議会
  2. 政権交代のある民主主義
  3. 派閥解消、脱・族議員
  4. 当選回数主義の改善と能力主義の導入
  5. 候補者決定の新しいルールの導入

の5つであった。1994年、この内容を反映させた「政治改革関連法案」が成立して小選挙区比例代表並立制が導入された。

公平に言えば、「政治改革」によって「政治とカネ」の問題は、劇的に減少はした。派閥は弱体化し、政策中心の政治も一定程度実現したといえるだろう。候補者公募の実施も常態化し、能力主義も前進した。

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