ジャニーズ、安倍派、統一教会…これまで社会を支配してきた権威・権力が崩れた2023年を総括する

2023.12.28
 

自民党の「集票マシーン扱い」が延命させた旧統一教会

続いて、旧統一教会の問題である。文部科学省は10月13日、旧統一教会に対する解散命令を東京地方裁判所に請求した。文科省は、教団を巡る高額な献金や霊感商法の問題について、宗教法人法に基づく「質問権」の行使によって実態の把握を目指してきた。また、被害を訴える元信者らへの聞き取り調査も進めてきた。

解散命令を出したということは、教団に解散を請求するのに十分な証拠がそろったとみられる。今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。旧統一教会側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある。

旧統一教会は、1960年代から高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集める「霊感商法」や、全国の大学で統一教会系の学生組織に加入した学生が、洗脳により教団関連施設に泊まり込み、親に寄付金を要求し、受け入れられないと「サタン」と親を罵り、「殉教する」と自殺をほのめかすなど異常な言動を繰り返し、家庭崩壊する「原理研究会問題」など、さまざまな被害が続出していた。

筆者は1987年4月に大学に入学したが、入学式に向かう道で、「原理研の勧誘に気をつけろ!」と大学関係者が注意を呼び掛けていたのを覚えている。だが、それはまだ、知る人ぞ知る問題であった。

旧統一教会が全国民の注目を集めたのは、1992年8月25日、韓国ソウルのオリンピックスタジアムで開催された合同結婚式だった。アイドル歌手で女優の桜田淳子、新体操のスター山崎浩子が、教祖が勝手に決める見ず知らずの男性と結婚した。何千組のカップルに交じって集団で結婚式を挙げるという衝撃的な姿が、日本のテレビで流れた。そのことによって、「霊感商法」や「原理研」の問題がメディアに大々的に取り上げられ厳しい批判を浴びた。

だが、旧統一教会はその後も生き残った。メディアなどの批判により、「霊感商法」を露骨に行うことは減少した一方で、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫った。

合同結婚式に参加後、家族と連絡が取れなくなり「行方不明」になった日本人妻が6,500人いるとされる。また、こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない。安倍晋三元首相を銃撃したとして殺人罪などで起訴されている山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしてきた。

90年代前半に、すでに厳しい批判を浴びていた旧統一教会の延命と、その被害者の拡大に政治が手を貸してきたことは明らかだ。旧統一教会は、選挙活動の熱心さがメディアに報じられた。国会議員事務所を教会の関係者が、日常的にほぼ無償の形で手伝いをしていた。選挙の時には、信者が動員されて運動を繰り広げていた。

旧統一教会は、自民党の有力な支持団体となり「社会的な信用」を得ようとした。政党の有力な支持団体という「お墨付き」を得れば、信者を集めやすくなる。信者を集められれば、「お布施」「寄付」など資金集めもやりやすくなるからだ。その教団の思惑を、自民党も利用してきた。

旧統一教会は、国政のみならず地方議会にまで広く浸透している。教団の影響力は日本の隅々にまで行き届いていると言っても過言ではない。「解散命令」をくだしたとしても、旧統一教会と政治や行政が完全に手を切ることは極めて困難な状況だ。

【関連】地方行政にまで浸透。日本国が統一教会と手を切ることは可能か?

旧統一教会の思想や政策が、自民党の政策に影響を与えたとは考えない。だが、自民党が旧統一教会を「集票マシーン」として利用してこなければ延命はできず、被害者は減少しただろう。

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