ジャニーズ、安倍派、統一教会…これまで社会を支配してきた権威・権力が崩れた2023年を総括する

2023.12.28
 

メディアと警察の「黙殺」が広げた少年たちの性被害

NHKと民放の在京キー局は、報道や制作、編成を担当した社員や元社員らからヒアリングして旧ジャニーズ事務所とのこれまでの関係性を検証し、それぞれ番組を放送した。重要なのは、どの番組も1999年頃に週刊文春が性加害問題を報じた時や、2004年頃に文春記事の重要部分を真実と認める判決が最高裁で確定した時に、この問題を報道しなかったことを認めたことだ。

そもそも、旧ジャニーズ事務所が創設された1960年代から、ジャニー氏による性加害は芸能界では広く知られた話だったという。80年代後半には、雑誌『噂の真相』における特集、元フォーリーブス・北公次氏の告発本『光GENJIへ』シリーズなど、元所属タレントによる告発本が出版された。しかし、当時光GENJIのCD売り上げが減少するなど、世論は告発本に反応した多が、メディアが取り上げることはなかった。

前述の通り、99年に『週刊文春』がジャニー氏の性加害疑惑に関して被害者の証言を基にキャンペーンを実施した。これに対して、旧ジャニーズ事務所は名誉棄損で文春を告訴した。しかし、民事裁判においてジャニー氏の性加害は「重要な部分について真実」と認定され、2004年に東京高裁で、名誉棄損に当たらないとの判決が確定した。だが、前述のように、この判決を新聞、テレビなど主要メディアがほとんど報道することはなかった。ジャニー氏が世論の批判を浴びて社会的制裁を受けるようなことはなかった。

メディアは、視聴率・売上第一主義である。人気タレントを多数擁するジャニーズ事務所は強大な権力を誇り、テレビ局・マスメディアは逆らうことができなかった。テレビ局は、さまざまな番組で長年にわたりジャニーズのタレントを多数起用しており、ジャニーズ事務所と深い関係を築いてきた。特にNHKは、前述の検証番組で驚くべきことに、喜多川氏の性加害行為が同局内でも行われていたと報じたのだ。

2000年代には、児童に対する性的虐待に対する厳しい批判が高まっていた欧米で、米The New York Times、英The Guardianなどのメディアがジャニー氏の性加害を取り上げるようになった。しかし、日本のメディアはこれらを黙殺し続けた。

さらに、メディアのみならず、警察も動かなかった。被害者の中には、ジャニー氏から受けた性被害を警察に訴えた者もいた。だが、警察は「天下のジャニーズの社長がそんなことするわけがない」と答えるなど、まったく相手にせず、被害届を受理しなかった。警察が、ジャニー氏の性被害から目を背け続けた理由に、旧ジャニーズの背景にある「巨大な権力」の存在が指摘されることもある。

元タレントによる告発本などが出た80年代後半-90年代に、メディア、警察がこれらを黙殺することなく動いていたらどうだったか。少なくとも2000年代前半、ジャニー氏の性加害が最高裁で確定し、欧米からの批判も浴びた時に目を背けずにいたら、どれほど多数の子どもたちが被害に遭わずにすんだかと思うと、残念でならない。

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