新たな危機の火種。韓国を敵国と見なし、プーチンと手を組んだ北朝鮮

 

ガザ紛争と北朝鮮の軍事台頭の割を食うウクライナ

しかし、“国際社会”に実質的に三正面の作戦実行を行う余裕はないと思われ、その割を喰うことになる最前線がウクライナでしょう。

ロシアによるウクライナ侵攻からもうすぐ3年が経過しますが、ウクライナによる反転攻勢は遅々として進まず、欧米諸国とその仲間たちの対ウクライナ支援疲れが顕著になりだしたところに、イスラエル・ハマスの戦争が勃発し、イスラエル軍によるガザでのパレスチナ人への無差別攻撃による犠牲の拡大への対応と周辺国への波及・拡大を防ぐためのあらゆる努力が優先されることになり、ウクライナへの軍事・経済支援は滞っています。

アメリカ政府の対ウクライナ支援のための資金はすでに枯渇し、新たな予算が担保される可能性は低いと思われると同時に、ウクライナ支援の是非がアメリカ国内の政争の具にされることで、より状況が悪化していると思われます。バイデン大統領からゼレンスキー大統領への口約束も実現のめどは立っていないのが実情です。

そしてこれまでの“ウクライナ領からのロシアの完全排除を目指すウクライナへの支援”の方針を見直し、すでに確保した領土を守ることに徹するべきだという姿勢に移行する方針と言われています。

欧州各国については、英国のスナク首相が2兆5,000億円規模の追加支援をウクライナに約束しましたが、こちらもまた議会での承認をまだ得ておらず実現の可否は未定ですし、フォンデアライエン委員長(欧州委員長)やマクロン大統領などは「ロシア・ウクライナ戦争の停戦実現のために外交努力を強化する」と発言するものの、具体的な軍事支援の拡充と継続といったような先立つものはなく、それは日本からG7議長国を引き継いだイタリア政府の方針(クロセット国防相)にも引き継がれています。

2023年6月からウクライナが行っている反転攻勢は失敗との見方が強く、戦闘が泥沼化する中で、巨額の援助と膨大な量の軍事支援が功を奏さず、かつ供与された兵器管理がずさんであることが明らかになったゼレンスキー大統領とウクライナ政府と距離を置き、このままゼレンスキー政権がロシアとの停戦協議の実施を拒み続ける場合には、支援の継続は不可能ではないかとの見方が強まっているようです。

そのような動きと雰囲気を敏感に感じ取っているのか、12月あたりからプーチン大統領の発言の中に“停戦に向けた交渉に臨む用意がある”という内容が含まれるようになってきており、「戦争を長引かせているのはウクライナ」というような風潮を、ウクライナの後ろ盾となっている欧米諸国とその仲間たちの国内で高めようとしているように見えます。

とはいえ、注意しないといけないのは、その発言と同時に「“on Russia’s terms”(ロシアが提示する条件の下ならば)』というBig IFが付けられていることです。

ロシアの提示する条件をウクライナはもちろん、なかなか欧米諸国とその仲間たちも受け入れることはないと考えますが、このような偽の前向きな発言を提示しておくことで、ウクライナ国内と欧米諸国とその仲間たちの国内で、反ゼレンスキーの波風を立てようとする心理戦の狙いが透けて見えてくるのは要注意でしょう。

プーチン大統領とロシア政府の狙いは、【ゼレンスキー大統領の排除と親ロシア政権の樹立】、そして【NATOに代表される欧米の影響力と軍事的プレゼンスの“ロシアの勢力圏からの排除”】さらには【すでに“一方的に”編入したウクライナ東南部4州のロシアへの帰属を認めさせることと、クリミア半島の支配の固定化】があると思われます。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • 新たな危機の火種。韓国を敵国と見なし、プーチンと手を組んだ北朝鮮
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け