新たな危機の火種。韓国を敵国と見なし、プーチンと手を組んだ北朝鮮

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開戦から3年が経とうとするウクライナ戦争に、終わりの見えないガザ紛争。そんな中にあって、北朝鮮は韓国を「第一の敵国」と定めロシアに急接近する姿勢をより鮮明にしています。2024年、国際社会はどのような事態に見舞われてしまうのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、北朝鮮の軍事的台頭が世界に及ぼす影響を解説。さらにガザ紛争の長期化で利を得るのはプーチン大統領だとした上で、パレスチナに和平をもたらす解決策を考察しています。

世界は戦いのドミノに陥ってしまうのか。北朝鮮の軍事的台頭で混乱化する国際社会

「北朝鮮の外交・安全保障政策における方針転換は、北朝鮮が戦争やむなしとのモードに入ったと受け取るべきか」

このような問いが海外メディアでの討論中に出てきました。

とてもセンセーショナルでショッキングな内容ではありますが、正直申し上げて私は答えを持ち合わせていません。

今週に入って北朝鮮のチェ・ソンヒ外相がモスクワを訪問し、クレムリンでプーチン大統領が直接会談するという非常に稀な厚遇をしたことと、相次ぐ弾道ミサイル発射実験の実施、そして金正恩氏自身が発言した「(これまでの融和・統一路線を破棄し)韓国を敵国と見なす」という内容はいろいろな憶測と懸念を生じさせます。

「またお馴染みの瀬戸際外交じゃないのか」という意見も多く聞かれますが、今回の状況が通常と異なるのは

【外交・安全保障面で背後にしっかりとロシアがついていること】

【ロシアの高度な軍事技術、特にミサイル技術が北朝鮮に提供されたと思われ、これからもそれが強化されると思われること】

【国連をはじめとする国際社会において、ロシアとくっつくことで北朝鮮の孤立が解消されることが期待できること】

などといった複数の特徴の存在です。

本当に韓国に対して戦争を仕掛けるか否かという問いは極端なものであると考えますが、ただ仮に北朝鮮優位の形で南北統一が実現したとしても、金王朝の権威の弱化は必須であると分析できるため、金王朝の基盤の堅持と強化が最大の使命に位置付けている金正恩氏とその一族にとっては、あえて統一の道を断ち、独自路線を引くことがベターと判断したのだと考えます。

実際に戦争に至るかどうかは分かりませんが、アメリカ大統領選挙でトランプ大統領の復活の可能性があると言われていることから、その結果が判明するまでは仕掛けてこないと見ています。

ただ、ロシアと北朝鮮の接近と、北朝鮮の態度の硬化は国際社会にとっては無視できない重大な懸念を生じさせます。

北朝鮮の飛躍的に伸びる弾道ミサイル技術と飛距離、核弾頭の小型化に関する技術革新、そしてロシアの手助けを得ていると思われるHCV(極超音速滑空兵器)の開発などは、もうこれまでのように口先だけの脅しで済ませることは出来ず、北朝鮮発の有事に備えて真剣な監視体制の構築と運用が急がれることになります。

そしてそれは日米韓の北東アジア地域に留まらず、世界がICBMの射程距離に入ると思われることから、欧州各国にとっても無視できない自国・地域の安全保障問題として扱われることになります。

即時に北朝鮮が戦争を仕掛ける可能性は低いと考えますが、北朝鮮が軍事的な国際プレイヤーとして台頭してくることになると、国際社会は、現在進行形のロシア・ウクライナ間の戦争と、一向に出口の見えないイスラエル・ハマスの戦争へのアクティブな対応の必要性に加え、広域アジアで高まる軍事的な緊張(米中台間の南シナ海周辺と朝鮮半島情勢などの北東アジア周辺)にも対応を迫られる【三正面の作戦実行】を迫られることになります。

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