イスラエルとハマスの紛争長期化で利を得るプーチン
パレスチナ人はこれまでに国家樹立を目指して戦ってきましたが、実現せずに今の中東におけるパワーバランスが出来上がって固定化しているため、現状に鑑みて、実現性のある解決、それもイスラエルが受け入れられる解決策を探す必要があります。
ネタニエフ首相はガザの統治について言及していますが、イスラエルによる再占領は、国際法に反し、同盟国で後ろ盾のアメリカが受け入れることはないでしょうし、アブラハム合意で国交正常化を図ったアラブ諸国の反発を招くことになり、さらなる混乱と悲劇を招く可能性が高まります。
解決策の根本となる諸条件がいくつかあります。
まず、ガザ地区はパレスチナ人によって統治されなくてはなりませんが、自治政府はそれには向いていませんし、ハマスによる統治への参加はイスラエルが受け入れ不可能なので、別の体制が必要になると考えます。そしてそこにはエジプトやヨルダンなどの周辺国や、サウジアラビア王国やUAE、カタールなどが、ガザの復興とサービスの拡充のために関与する必要があるかと思います。
次にすでにユダヤ人が入植しているヨルダン川西岸地区から、ユダヤ人を追い出すことは考えないことも現実的な解決策かと考えます。そうすることで新たな争いをイスラエルとパレスチナの間に生じさせる種を減らすことが可能になります。
そしていろいろな解決策、特にパレスチナ人の独自国家に繋がる解決策を模索するためには、大前提として、これまでイスラエルを盲目的に支えてきたアメリカ政府が「このようなことはもうたくさんだ。イスラエルによる国際法違反と考えられる企てを今後はサポートしない」と宣言し、イスラエルによるパレスチナ支配の終結を決意し、国際的に宣言することが必要でしょう。そして、これまでアメリカがイスラエルのために拒否権を発動してきた慣例も終結させ、国連安全保障理事会の場で停戦決議を採択して、イスラエルを従わせるように舞台を用意することが必要だと考えます。
そして余計なお世話ではありますが、イスラエル社会は総じて極めて民主的な構造であり、国際的にイスラエルを孤立させ、イスラエル人の人質の生命を犠牲にし、ガザの民間人を殺戮する決定を推し進める自国の姿を容認しないとする有権者が増えてきていると言われていることから、国益と自身の生活の安定、そして何よりも安心のために、現状を一刻も早く変えようとすることも必要かと思います。
そして欧米とその仲間たち、国際社会、イスラエル、アラブ諸国が協調して、これまでに話し合われてきた2国家解決ではなく、パレスチナという新しい国を作る提案を話し合うことで、現実的な解決をもたらし、これまで長年続いてきたnever endingな戦闘と苦痛に終止符を打つことに繋がるのではないかと考えます。
もし迅速にイスラエルとハマスの戦いを収めることが出来なければ、その影響はウクライナにも及び、北朝鮮によからぬことを考えさせ、そして他地域で眠っているか見逃されてきている数々の紛争の種が一気に芽吹き、解決不可能な混乱が私たちに訪れることに繋がるかもしれません。
そうなった場合、利益を得るのはロシアであり、その統治者プーチン大統領であり、そして大多数を占める傍観者という望まざる国際情勢が具現化することになります。
イスラエルとハマスの戦いも、ロシアとウクライナの戦いも、現時点では長期化することが予想され、解決のための策も手詰まり状態です。
解決には多層に絡み合う様々な利害と現実を丁寧に解き、皆が許容しうる現実的な解決策を編み出してくることが必要になりますが、微力ながらそのお手伝いを、仲間たちと共に、させていただきたいと思います。
以上、今週の国際情勢の裏側でした。
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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト









