懸念される「ウクライナの存亡に関わる事態」への発展
最初の2つについては、実現は難航が予想されるものの、3つ目に関しては、早期停戦と一旦ウクライナ支援をリセットしたいと考える欧米諸国とその仲間たちが水面下でウクライナに受け入れを考慮するように迫っていると思われます。
ゼレンスキー大統領とその政権にとってはその受け入れは、ゼレンスキー政権の基盤の崩壊につながることから受け入れることは到底できないという判断をするかと思いますが、それで欧米からの支援がなくなり、ウクライナが強大なロシアの前で孤立するような事態に陥ってしまうと、【戦闘がロシア・ウクライナ国境を超える恐れ】が出てきて、それはウクライナの存亡に関わる事態に発展する公算が高くなります。
ロシアはウクライナ軍による自国への攻撃を国家安全保障上の“脅威”と定義し、自衛権を発動してウクライナへの大規模一斉攻撃を正当化することになるでしょう。ロシアはいろいろなところでちょっかいを出していますが、戦争をしているのは対ウクライナの一正面だけですので、一気にウクライナに止めを刺しに来るか、じわじわといたぶるのかは分かりませんが、対ウクライナEnd gameの発動に繋がることになります。
ちなみにウクライナがロシアに対して攻撃を仕掛けるような事態が生まれ、そしてロシアが自衛権を発動してしまうと、欧米社会とその仲間たちも、国連などの国際社会も、直接的な戦争の拡大による安全保障上のリスクに加え、政治・外交面で大きなジレンマに直面することになります。
昨年10月7日にハマスがイスラエルに対して一斉テロ攻撃を加えたことに対するイスラエル軍の報復を“正当な自衛権の発動”と当初、擁護してしまったことで、“ウクライナに攻め込まれた”とロシアが主張して自衛権を発動し、対ウクライナ攻撃を全土に広めることを正当化してしまった場合、自制は促すことが出来ても、道義上、非難できなくなる状況に陥る可能性が高まることです。
そもそもウクライナに侵攻したロシアが悪いのは言うまでもないことですが、ウクライナに侵攻された場合、ロシアとしては“当然”自衛権を発動する権利を主張し、実際に発動して一斉にウクライナ全土への大規模報復を行うというかたちになると考えますが、ロシアによる攻撃が、これまでの半ば無差別とも思われる攻撃とは一線を画して軍事ターゲットへのピンポイントかつ確実な攻撃として実施されるような事態が来た場合、なかなか非難しづらい状況が生まれてしまいかねません。
もちろん、イスラエルによる“過剰な自衛権の行使”(EUのボレル上級外交代表など)のように、ロシアがウクライナ市民に対して無差別な“報復”攻撃に及んだ場合には再びロシアに対する重大なバックラッシュが待っていますが、いろいろと非難され、国際社会における孤立を深めても、いまでも国連安全保障理事会の常任理事国の座は維持し、あらゆる国際案件をかき回す力を発揮するロシアが突如引き下がることはないでしょう。
それに対ロ非難が何らかの形で湧き起ったら、先ほどの北朝鮮が引き起こす地域の安全保障に対する挑戦を発動させるべく、北朝鮮を焚きつけて、国際社会の緊急対応の目と注意をアジアに向けて、その間にウクライナを終わらせるという手段を取るかもしれませんし、中東に中国と共に影響力を発揮して(特にイラン)、イスラエルへのちょっかいをかけさせるという手段を取るかもしれません。
ロシアに思いのままにさせないためには、まず北朝鮮の暴発を抑止し、かつガザにおける衝突をいち早く終わらせることが大事ですが、それはそれでかなり難航しそうな感じです。
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