櫻井よしこ氏は空飛ぶ円盤か
あたしは、思想の右左はともかくとして、この部分、つまり「戦争が起こった時に、一般市民、特に少年たちまで銃を持たせて戦場へ引きずり出すべきなのか?」という点が考え方の分かれ道だと思ってる。たとえば、最近では極右の櫻井よしこ氏が「あなたは祖国のために戦えますか。多くの若者がNOと答えるのが日本です。安全保障を教えてこなかったからです。」などとツイートして物議を醸した。
自民党の石破茂氏も、かつて「アメリカの若者は世界の戦場で血を流しているのに、日本の若者は国のために血を流さなくても良いのか?」などとブログに書いていて問題視された。こうした人たちに共通するのは「自分は戦場へ行かないくせに他人には押し付ける」という前提だ。自民党の稲田朋美氏に至っては、一定の年齢になった若者を強制的に自衛隊に体験入隊させる「疑似徴兵制」まで提案してたくせに、もしも戦争になったら自分の子どもたちだけは絶対に戦場へ行かせないなどと言って炎上した。
こうした自分だけ安全な場所にいつつ他人に戦争を押し付ける人たちを見ていると、坂口安吾の『武者ぶるい論』も真実味を帯びて来る。そして、坂口安吾が「戦争の兆し」として挙げた「円盤」とは、もしかするとこうした思想の人たちの台頭のことかもしれないと思えて来る。
フランスではマクロン大統領の支持率よりも、極右政党「国民連合」のマリーヌ・ル・ペン党首の支持率のほうが高くなったし、昨年末のアルゼンチンの大統領選では「アルゼンチンのトランプ」と呼ばれる極右政党「自由前進党」のハビエル・ミレイが大統領に選ばれた。昨年末のオランダの総選挙でも「オランダのトランプ」と呼ばれる極右、ヘルト・ウィルダース党首の極右政党「自由党」が大勝した。そして、今年のアメリカ大統領選では、本家のドナルド・トランプ氏の優勢が伝えられてる。
‥‥そんなわけで、イスラエルによるガザへのジェノサイドは、すでにイエメンのフーシ派とアメリカの戦闘へと発展し、1月22日には12日に続いて米英両軍によるフーシ派への攻撃が実行された。すでにオーストラリア、カナダ、オランダ、バーレーンなどもアメリカとの共同声明を発表したので、中東の戦争が「第3次世界大戦」へと拡大するかどうかは、今年のアメリカ大統領選に懸ってる。
もしもアメリカの世論通りにドナルド・トランプが大統領の座に返り咲くようなことにでもなれば、安倍晋三の再登場の時のように好き勝手なことを始めるだろうから、日本はこれまで以上にカネをむしり取られるだけでなく、今度は「日米同盟」という言葉を大義として「自衛隊の戦争参加」まで強要して来るだろう。
2022年12月、岸田政権が米政府からの命令で閣議決定した「防衛3文書の改定」には、「敵基地攻撃能力の保持」を柱に防衛予算の倍増や防衛装備品の輸出の緩和など、今から考えると、まるで戦争の準備のような項目がズラリと並んでる。そして、最も不安になるのが、日本の自衛隊の中に米軍の司令部を置き、有事の際には米軍の司令官が日本の自衛隊を自由に使えるようになるとも受け取れる指揮系統の変更だ。
もしも自衛隊が米軍と一緒に戦争に参加することにでもなれば、たとえそれが前線から離れた後方支援であったとしても、相手の国々からは敵と断定されるので、日本にもICBMが飛んで来るだろう。そして、そのターゲットとなるのは、第一が米軍の前線基地である沖縄であり、次が日本に打撃を与えるための大都市と全国の原発だろう。現時点ではすべて「可能性」としての話だけど、少なくとも「どこからかUFOが飛んで来て人類を救ってくれる」というファンタジーよりは、遥かに現実的な未来予想だと思う。
(『きっこのメルマガ』2024年1月24日号より一部抜粋・文中敬称略)
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