UFOと戦争、あるいは“空飛ぶ円盤”櫻井よしこと三島由紀夫の「愛国」をめぐる相違について

 

三島由紀夫が考えた「戦争をなくす方法」

このメルマガを創刊当時から読んでる人なら、あたしが小学校に上がる前に、入院中の小児病棟の窓から目撃した「ピラミッド型UFO」の話や、小学5年生の時に目撃した「葉巻型の母船」の話を覚えてると思う。巨大な母船の下から小さいUFOが何機も出て来て、あちこちをジグザグに飛び回ってから、また母船の中に戻って行き、母船自体がクネクネと波打ち始めて、シュッと消えちゃったというアレだ。

こんなに凄い場面、あたし1人で目撃してたら誰も信じてくれなかったと思うけど、この時は5~6人のクラスメイトと一緒で、全員で目撃した。その上、他にもたくさん観た人がいたみたいで、翌日の新聞には誰かが撮影した写真が載ったから、母さんもおばあちゃんも信じてくれた。そんな「葉巻型の母船」を、あの三島由紀夫も目撃してたのだ!それも、三島も1人じゃなくて、奥さんと2人で目撃してたのだ!

‥‥そんなわけで、一般的な円盤型のUFOよりも、遥かにレアな「葉巻型の母船」を奥さんと一緒に目撃した三島由紀夫は、これでますます熱中しちゃって、2年後の1962年、自身初のSF長編小説『美しい星』の連載を、文芸雑誌『新潮』の1月号からスタートした。そして、同年11月号で完結すると、すぐに新潮社から単行本が刊行された。『金閣寺』や『仮面の告白』や『潮騒』や『春の雪』など、三島由紀夫の代表作しか読んでない人には驚きの内容だと思うけど、あたしは三島の小説の中では『夏子の冒険』と同じくらい『美しい星』が好きだ。

何しろ主役の一家が、父は火星から来た火星人、母は木星から来た木星人、息子は水星から来た水星人、娘は金星から来た金星人というもの凄い設定なのだ。父がスパイ、母が殺し屋、娘が超能力者という『SPY×FAMILY』よりもぶっ飛んでる。そして、その4人が、東西冷戦時代の米ソの核開発競争によって滅亡を迎えた人類を救うために、大活躍‥‥じゃなくて、地道な努力をするのだ。

その上、人類滅亡を目指す別の宇宙人グループと以下略‥‥ってなわけで、これを読んで興味を持ち、これから読む人がいるかもしれないので、詳しい内容には触れないけど、三島由紀夫を「食わず嫌い」だった人には、あたしは『夏子の冒険』と『美しい星』をオススメする。ちなみに『美しい星』が『SPY×FAMILY』なら、『夏子の冒険』は、最近、実写映画化された『ゴールデンカムイ』との類似点が多々あるので、こちらも凄く楽しめる。

あまりにも美しい物語

‥‥そんなわけで、あたしは以前、このメルマガに「世界から戦争をなくす方法」として「もしも宇宙人が地球を侵略するために攻めて来たら、地球人同士で戦争してる余裕なんかなくなり、アメリカもロシアも中国もみんなで協力して宇宙人と戦うと思う」と書いたことがある。だけど、これじゃ一時的に地球人同士の戦争がなくなっても、結局は宇宙人に滅ぼされちゃうから意味がない。

そこへ行くと、宇宙人が地球人に成りすまして家族のふりをして日本に住んでて、その宇宙人が愚かな人類を核兵器による自滅の道から救ってくれるという三島由紀夫のストーリーは、あまりにも美しいし、人類にとって都合がいい。ただ、Mナントカ星雲からワープ航法でやって来た今どきのスマートな宇宙人とかじゃなくて、火星人とか金星人とか言われると、例のタコみたいな形の宇宙人を思い浮かべちゃって、ぜんぜんリアリティーを感じない。

でも、三島由紀夫が敬愛してた荒井欣一会長も、三島の没後の1978年、専門誌『UFOと宇宙』のインタビューで、「もしも地球を監視している第三者的存在のUFOというものの実在がはっきりすれば、たちどころに戦争はなくなるんじゃないか」と発言してる。UFOや宇宙人の存在の是非は置いといて、存在するものだと仮定すれば、これほど美しい着地は他にないだろう。だって、人類の科学力を遥かに超えた存在を、地球を監視する第三者的存在として定義するという発想は、もはや「宗教における神」と同義だからだ。

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