リクルート事件の中曽根、裏金疑惑の森喜朗。“主役”はまたも逃げてしまうのか?

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自民党の派閥の政治資金パーティーに絡む「裏金疑惑」は、本当に罪に問いたい大物政治家に対する起訴は見送られ、会計責任者を訴追して幕引きとなってしまうのでしょうか。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で評論家の佐高さんは、やはり主役級の政治家は起訴されなかったリクルート事件を検証した自身の記事を紹介。「第2のリクルート事件」と言われた今回の事件も、主役級の議員は逃げ切ってしまうのではないかと懸念を伝えています。

疑惑の主役と脇役

裏金事件は第2のリクルート事件と言われるが、リクルートでは首相の中曾根康弘が側近の藤波孝生(官房長官)を身代わりにして逃げ切った。中曾根はロッキードでも助かっている。今度の裏金で、かつての中曾根に位置するのは森喜朗だろう。森はリクルートでも疑惑の政治家だった。

私は1989年春に『スポーツニッポン』の依頼で同紙に「リクルート疑惑の検証」を書いた。「疑惑の源流」と「疑惑の主役と脇役」と2回にわたってである。

後者の第13回が「危うし、森喜朗」で「自民党石川県連会長の森喜朗が辞任した。リクルートコスモス株3万株を譲渡され、本人が早々にそれを認めたことで、以後、あまりマスコミでは問題となっていないが、地元では大変らしい」と始まる。

選挙区の小松市では、駅とか地下道に、スプレーで「森喜朗、近日中に逮捕」などと大書されたからである。支持者たちがそれを消して歩き、警察も犯人をさがしたが、容易に見つからなかったとか。

そのころ、時事通信政治部の『21世紀の首相候補生』という本が出た。それを見ると、自民党の人材難に驚くほかないが、取り上げられているのは13人。小沢一郎、小渕恵三、加藤紘一、海部俊樹、河野洋平、羽田孜、橋本龍太郎、藤波孝生、三塚博、森喜朗、山口敏夫、山下元利、渡部恒三である。この中で、小沢、小渕、加藤、橋本、藤波、森、山口と、7人もがリクルートに関わって名前が出た。

もちろん、リクルートが問題になる前の段階での「首相候補生」だが、注目すべきは、森が「財界人との交遊」で牛尾治朗(ウシオ電機会長)を挙げていることである。加藤、海部、河野、橋本、藤波も親しい財界人として牛尾を挙げている。

しかし、牛尾はリクルートの創業者、江副浩正を財界人に紹介した水先案内人である。私は当時、ある週刊誌で「江副はいわば“財界ソープ嬢”であり、それを旦那方に取り次ぐ“やり手婆ァ”が牛尾だ」とコメントした。

『スポーツニッポン』の連載の後編の第1回が「江副浩正という男」だった。

1989年3月4日、江副浩正の政財界への“水先案内人”牛尾治朗の息子とフジテレビのアナウンサーの結婚式があった。媒酌人は日商会頭の石川六郎。“花婿の父”の牛尾が出席したのは当然だが、牛尾の娘を息子の嫁にもらっている安倍晋太郎も、牛尾側の親戚として参列しただろう。ポスト中曾根は安倍と見て、江副は安倍と親交を深めていたからだ。もっとも、江副はもう1978年ころには安倍と料亭で会うような仲だった。この年の5月1日、江副は、当時、官房長官だった安倍と『夜に蠢く政治家たち』(元玄関番が書いた本)で有名になった赤坂の「大野」で会っている

疑惑の主役はまた逃げてしまうのか!?

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