関東・首都圏大雪とも無縁ではない“世界の気候変動”。改めて考えたい「日本の家屋が寒すぎる」問題

 

深刻化する雪不足で廃業に追い込まれるスキー場も

一方で、長期的な地球温暖化の影響により、雪不足が深刻化。たとえば、世界中でスキー場の運営に支障が出ている(*5)。

気温の上昇によって雪が減り、ウィンタースポーツができなくなることは、世界的な懸念だ。

カナダ・ウォータールー大は2022年、温室効果ガスの排出を大幅に減らさない限り、過去に冬季五輪を開いた計21都市のうち、今世紀末でも開ける寒さが見込める都市は札幌市だけになるという予測を発表した。

いまのところ、各地のスキー場は降雪の減少に対し、人工雪を大量に作ることで対処している。

しかしスイスのバーゼル大学の研究によると、標高1,800~2,000メートル以下に位置するスキー場は、人工雪への依存度が今後も増加していくという。そして、低地にあるスキー場は廃業に追い込まれると予想。

また、大量の人工雪を作ることによる悪影響も大きい。造雪には大量の電力と水が必要となるが、使用電力が増えれば二酸化炭素の排出量も増える(*6)。

冬の厳しい寒さに対応できない、日本の住宅

世界各地で、気象が「極端」に向かいつつある。そしてこの極端な気象をもたらしている大きな要因と考えられているのが地球温暖化だ。

今後も、たびたび厳しい寒さが襲うだろう。しかしながら、日本の住宅は先進各国と比べて断熱性能が極めて低い。

ノンフィクションライターの高橋真樹さんは、

「たとえば冬が寒い先進国でアルミサッシが主流なのは日本だけ。日本の建築基準は断熱性能が低く、国際基準を大きく下回っている。こうした寒い家は、光熱費を高め、健康被害ももたらしている」(*7)

とする。

高橋さんによると日本の住宅では、必要な部屋だけを冷暖房することが一般的。しかし空調している部屋としていない部屋との温度差が大きく、健康被害が起きている状態とのこと。

一方、欧米や韓国などでは、住宅の断熱性能の最低基準を法律で定め、義務化している。

日本ではおなじみのアルミサッシではあるが、実はこのアルミサッシが主に使われてきた国は、先進国で冬に寒くなる地域では日本だけという(*8)。

引用・参考文献

(*1)Nancy Cook、Hadriana Lowenkron「『生命脅かすほどの寒さ』、米大統領選の共和党候補指名争いに影響も」Bloomberg 2024年1月15日

(*2)「米寒波の死者90人超える 航空便7万便に影響」日本経済新聞 2024年1月24日

(*3)「寒波と温暖化 10年に一度の最強寒波に温暖化が関係?【風をよむ】【サンデーモーニング】」TBS NEWS DIG 2023年1月29日

(*4)TBS NEWS DIG 2023年1月29日

(*5)藤野隆晃・稲垣康介「雪減るスキー場、日本でも北欧でも 企業や町が『ためる』解決策」朝日新聞 2023年5月19日

(*6)COURRiER Japon「いつか来る、『世界からスキー場がなくなる日』─産業の維持自体がさらなる雪の減少を招く?」BBC NEWSほか 2023年2月1日

(*7)高橋真樹「冬が寒い先進国で『アルミサッシ』を使う国は日本だけ…国際基準以下の『寒い家』を許してきた住宅政策の大問題」PRESIDENT Online 2024年1月29日

(*8)高橋真樹 2024年1月29日

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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