プーチンと“敵対”した男。富豪ロスチャイルド氏の死去で「ひとつの時代」が終わった

 

ロスチャイルドvsプーチン

この世の中には、「とんでも陰謀論」もあれば、「陰謀論のようなホントの話」もあります。これからお話するのは、まさに、「陰謀論のようなホントの話」です。

ジェイコブ・ロスチャイルドとプーチンの戦いについて。

プーチンは2000年、大統領に就任しました。その後、90年代ロシアの政治経済を牛耳っていた2人のユダヤ系新興財閥、ベレゾフスキーとグシンスキーを退治しました。ベレゾフスキーは、イギリスに逃げ、グシンスキーは、イスラエルに逃げたのです。

もう一人のユダヤ系新興財閥で石油王と呼ばれたホドルコフスキー。彼は、当時ロシアの石油最大手だったユコスのCEOでした。「ベレゾフスキーとグシンスキーがプーチンにやられた!このままでは、俺もやられる!」と恐怖した彼は、ジェイコブ・ロスチャイルドに助けを求めました。

このあたり、陰謀論とはもっとも遠い、日経新聞元モスクワ駐在員、栢俊彦さんの『株式会社ロシア』(日本経済新聞出版社刊)を参考にしてみましょう。

参考:『株式会社ロシア

新興財閥の二大大物であるベレゾフスキーとグシンスキーが2000年、プーチンによって国外逃亡に追い込まれた事件は、ホドルコフスキーにショックを与えた。
(p39)

身の安全を守るため米英に庇護者を求めたホドルコフスキーは、首尾よくヤコブ・ロスチャイルド卿の知己を得、世界の有力者が集う社交界への扉を開けた。
(p39)

ホドルコフスキーは、01年12月、ロスチャイルド卿と共同で慈善団体の「オープン・ロシア財団」をロンドンに設立、翌年には米国にも事務所を開いた。理事にはロスチャイルドのほか、元米国務長官のヘンリー・キッシンジャーや元駐ソ連大使のアーサー・ハートマンが名を連ねた。
(p39)

つまり、ホドルコフスキーとジェイコブ・ロスチャイルドは、反プーチンで共闘することにした。

ところがプーチンは2003年10月、ホドルコフスキーを逮捕しました(させました)。容疑は「脱税」などです。これで世界は、「プーチンは、世界の支配層を恐れない」ことを知ったのです。プーチンは、「ユダヤ陰謀論者」「ロスチャイルド陰謀論者」の「英雄」になりました。

ジェイコブ・ロスチャイルドは、結局プーチンを打倒できないまま亡くなりました。それで、「ロスチャイルド陰謀論」は、今後衰退していくでしょう。

デビッド・ロックフェラーが2017年に亡くなり、ヘンリー・キッシンジャーが2023年に亡くなり、ジェイコブ・ロスチャイルドが2024年2月26日に亡くなった。

なんとなくですが、「一つの時代が終わりつつあるのだな」と感じるのは、私だけでしょうか?

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル2024年2月28日号より一部抜粋)

image by: National Library of Israel| Photography: Hanan Cohen, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print
いま読まれてます

  • プーチンと“敵対”した男。富豪ロスチャイルド氏の死去で「ひとつの時代」が終わった
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け