現代アートを極めていたら、マタギの嫁になっていた。ウソのような本当のお話

 

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

お世話になった各地の地元先輩方との交流は刺激的だった。皆、「アートなんてよくわからねえけど」と口を揃えてはいたけれど、氷見の網元は「悩み持っとるときゃあの、海に出りゃいいが」、波佐見のやきもの屋は「しょせん、人間は情緒でしか動かんばい」など、実直な暮らしや仕事から生まれた説得力のある言葉をサラリと言ってのける

鍋と味噌を担いで、鍋を火にかける二股の支柱や薪も現地調達。生木を焚くにはテクニックがいるそうで、マタギの必須スキルらしい。そこまで荷物をミニマムにしても重たい缶ビールは背負ってくるという、楽しもうとする意気込みに敬意すら覚える

お婆さんが私を呼びつけ、作業小屋を見せてくれるというのでついていった。様々な樹皮や毛皮、カゴや道具類が並んでいた。ひとしきり案内を終えた彼女は正座をして、私の顔を覗き込むように言った。「おめさん、ここさ来る気はあるか?」

それからというもの、私の「ひ弱さ」は、ここの生き方を学べばまだ手遅れじゃないかもしれない、この暮らしを一から学んで引き継ぎたい、それは村の存続にもつながるのでは、と考えるようになった

正直、手は抜きたくなる。しかし、手を抜いたら良いバランスで保ってきた関係は終わってしまう

学ぶにつれ、工芸に限らず、人がつくるものとは「言葉」なのだと理解し始めた

マタギの夫は、お金にするために命を取ることはしたがらない。しかし、いただき物のお返しにするためには、どこまでも山奥へ分け入る。この環境下での暮らしを助け合い、支え合う誰かのためでなければ、狩猟の動機にならないのだ

男女とも、余裕のない状況下にあっても、美的感性や仕事のおもしろみをひねり出してくるのだから、生きることに手を抜かないこの村の人々は、私には人間国宝としか思えないのだ

SDGsだとか持続可能性などと表せば、なんだか知的で聞こえは良いけれど、つまりは「人間本位」ではなく「自然本位」ということなのかもしれない

目次が、「春夏秋冬」ではなく、「夏秋冬春」の順に並んでいるのが、またいいですね。

この著者と同じくらい、覚悟があって、柔軟性があって、生きる知恵があれば、人生、何も怖くないと思います。

週末の読み物として、ぜひ、チェックしてみてください。

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Amazon.co.j立ち上げに参画した元バイヤー、元読売新聞コラムニスト、元B11「ベストセラーBookV」レギュラーコメンテーター、元ラジオNIKKEIレギュラー。現在は、ビジネス書評家、著者、講演家、コンサルタントとして活動中の土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介。毎日発行、開始から既に4000号を超える殿堂入りメルマガです。テーマ:「出版/自分ブランド/独立・起業」

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【著者】 土井英司 【発行周期】 日刊

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