芸能記者が明かす「浅田真央と週刊誌」平成の報道は天才スケーターを育てる“親父の背中”をどう伝えたか?

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姉・浅田舞さん(35)の“路上キス”報道をキッカケに、バンクーバー五輪銀メダリストの妹・浅田真央さん(33)や、天才スケーターを育て上げた「浅田家」に、あらためて世間の注目が集まっているようです。この浅田家に関して「職業記者として、絶対に忘れられない取材がある」と振り返るのは芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さん。いわゆる“夜職”に就いていたとされる浅田家の「お父さん」をめぐって、週刊誌の編集者と記者はどんな攻防を繰り広げていたのでしょうか?

決して忘れられない、浅田真央の「お父さん」の話

ちょうど1週間前の記事で、浅田真央ちゃんを育て創り上げた、亡くなったお母さんのことを書いたのですが「真央ちゃんを更に好きになりました」という御手紙や御意見をたくさんいただきました。

タイムリーなネタでもなく、時事ネタでもないブログに多くの反響があったことに驚くとともに、改めて真央ちゃんが唯一無二の存在なんだと感じさせられました。

ありがとうございました。

芸能人や有名人を追いかけ、取材をしていると良くも悪くも様々なその人物の生き様が見えてきます。

本人はもちろん、その兄弟姉妹や家族、親類縁者の情報も耳に入ってきます。

真央ちゃんでいえば、今でも私の心の永遠に癒えない生傷になっているのが、彼女がジュニア選手として日本中に注目され始めた直後に取材したお父さんに関する記事です。

あんな天才スケーター少女はどういった家庭環境で育てられたのか、どんな両親や家族の中でどのように成長してきたのか、そして成長していくのか…を取材してわかった、実父の職業に関する記事でした。

掲載記事が発売されると、私の元にはたくさんの非難する声が寄せられてきました。

「芋澤さんを信じて情報提供したのに、あんな下品な記事にするなんて…もう2度と協力しません」

「世俗の事などまだ何も知らない幼気な真央ちゃんの父親の職業を公表して何が楽しいの?」

「心を痛めた真央ちゃんが、これが原因でオリンピックに行けなくなったらどう責任を取るんだ!」

今の時代で言えば“炎上”したのです。

実は…これは言い訳になりますが、私の取材が記事になる過程で、担当編集から上の人間が提案したタイトルや記事の中見出し、広告の文言に私は強く反対していました。

この記事が原因で、真央ちゃんが学校でイジメにあったり、それこそ傷心してしまったら一体誰が責任を取るのか…と詰め寄ったことも。

“どうせ週刊誌の記事なんて、ある事ない事をおもしろおかしく誇張して書いているんでしょ”と思っていらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、私も芸能記者という職業を持つ人間のひとりです。

天才スケーターの成長の足枷になる不安を感じぜざるを得ませんでした。

しかし担当編集は「今までどこも報じていないし、天才少女の父親がこういう職業だったと記事にすれば絶対本は売れるから」と最後まで譲歩してくれませんでした。

雑誌を売るためには何でもやってやる…編集者も出版社の出世街道を歩いているサラリーマンだと、この時ほど強く感じたことはありませんでした。

この号の中吊り広告は直視できませんでしたし、心の中では名古屋方面に向けて両手を合わせているという申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

「真央ちゃんはあの記事を一生懸命に読んでたよ」

雑誌が発売されしばらく経過した頃、私は真央ちゃんの近況をあるスタッフを通じて知る事になりました。

「真央ちゃんはうちの店に置いてある芋澤さんの記事を一生懸命読んでいたョ」と。

「真央ちゃん、泣いたりしていないよね、大丈夫だよね」と切り返すと「特にそんな風には見えなかったョ。でもいつもグラビアの写真をパラパラ見るくらいの真央ちゃんが、この号はしっかり記事を読んでいるようだったョ」とも。

この前書いたように実母は身を粉にして、全身全霊で真央ちゃんを守って育てている方でしたから、スケートに関する事以外の雑音が娘の視界に入らないようにしていた可能性も否定できません。

スケートに関する費用の捻出のために父や母がどんな苦労をしているのかなんて、幼い姉妹には何の関係もないことと割り切っていらっしゃったような気もします。

浅田真央に銀行は1円もお金を貸してくれなかった

実際お母さんは「“浅田真央の母です”と名乗っても、銀行は1円も貸してくれなかった…」と言っていたと、後日スケート関係者が教えてくれたこともありました。

よく報道されるように、フィギュアスケートを習うには先立つものが必要不可欠です。
それも相当な。

浅田家は多少は恵まれていたのかもしれませんが、真央ちゃんなり舞にスポンサーが付くまでのお父さんとお母さんの人知れずしてきた費用の捻出に関する努力は凄まじいものがあったと想像できます。

ここで言わせていただくなら、お父さんの事を記事にしたのも、娘たちに自分の心血注いだ全てをかける親の思い…みたいなことを伝えたいだけからでした。

その後お父さんには警察沙汰になるような事も起きましたが、姉妹の理想とする男性像の根本には必ずこの父親がいる…私にはそんな気がしています。

お父さん、お元気でしょうか…。

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プロフィール:芋澤貞雄

1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao

記事提供:芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄の「本日モ反省ノ色ナシ」

image by: 浅田真央アイスショー「BEYOND」公式サイト

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