ふるさと納税に「Amazon参入」の衝撃。日本の仲介サイトは壊滅か?巨大IT打倒のヒントは怪メッセージ「お届け予定でした」にあり

2024.03.15
by kousei_saho
November,2,,2018,Sunnyvale,/,Ca,/,Usa,-,Amazon
 

23年には1兆円を超えたとされる「ふるさと納税」の寄付総額。そんなふるさと納税の仲介事業に、Amazonが25年3月にも参入予定であることが報じられ大きな話題となっている。

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楽天ふるさと納税」や「さとふる」といった仲介サイトは、寄付の受付や返礼品発送の支援と引き換えに、自治体から寄付総額の約10%程度の手数料を受け取っている。つまりは1千億円前後の巨大市場というわけだが、そこにAmazonが目をつけたのだ。

返礼品だけでなく独自特典やポイントも利用を後押し

2008年にスタートしたふるさと納税制度だが、なぜここまでの規模にまで成長したのか。

「ふるさと納税は言ってみれば“住民税の前払い”で、税金の一部を本来の納税地ではなく好きな自治体に“寄付”名目で前払いすることで、その分あとから支払う税が安くなるというものです。正確には寄付した金額から2,000円を除く全額が控除されます」

と話してくれたのは50代のテレビ情報番組関係者だ。

「つまり納税者は2,000円の負担増となるのですが、そのかわりに寄付した自治体からさまざまな返礼品がもらえます。つまり“返礼品の価値-2,000円”をまるまる得することになるというのが基本です。返礼品のほとんどがその基準を満たしていますから利用者が増えるのも当然ですよね」(同前)

さらに、ふるさと納税仲介サイト各社が用意した独自特典や、寄付をクレジットカードなどで決済した際に付与されるポイントも、納税者にとっては大きなメリットになるという。

すでに「ふるさと納税業界」で大きな存在感を示すAmazon

実はAmazonは、今回の発表以前から「ふるさと納税業界」では大きな存在感を示していた。かつては何の縁もゆかりもない「Amazonギフト券」を返礼品としていた自治体も多数あったのだ。例えば大阪府泉佐野市は2018年にAmazonギフト券を贈るキャンペーンを仕掛け、多額の寄付金を得ていたと報じられている。

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しかしこの事態をふるさと納税の趣旨にそぐわないとした国が、「金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)」の送付を禁じたため、“返礼品”としてのAmazonギフト券は消滅している。たが“抜け道”はあるという。

「ふるさと納税仲介サイトの独自特典として、Amazonギフト券は今も大人気です」

というのは40代の男性ネットメディア編集者。自身もふるさと納税を利用しているという。

「まずポイントサイト経由でふるさと納税仲介サイトに新規ユーザー登録をして、仲介サイトから自治体に寄付をすることで、Amazonギフト券の“多重取り”ができるケースもあるんです」

ポイ活とは無縁の生活を送る筆者には皆目理解できないこの仕組みを、男性ネットメディア編集者が解説してくれた。

曰く、例えば還元率が5%に設定されたポイントサイト上に掲載されている、寄付額の10%分のAmazonギフト券の還元を謳う納税仲介サイトの広告をクリックして1万円の寄付をすれば、ポイントサイトからはAmazonギフト券に交換可能な500ポイント、仲介サイトからは1,000円分のAmazonギフト券と、合計1,500円分が得られるとのこと。つまり実質8,500円で1万円分の寄付ができるという計算だ。しかもこれは“裏ワザ”ではなく、ふるさと納税仲介サイト各社が“高還元率”を謳い積極的に宣伝していると男性ネットメディア編集者は言う。

自治体から送られてくる返礼品以上に、ほぼ現金として利用できるAmazonギフト券は納税者にとって魅力的であることは間違いない。

Amazonはふるさと納税に革命を起こすのか

Amazonはネット通販や動画配信のサブスクのほか、クラウドサーバーの分野もAmazon Web Services(AWS)で牛耳るITの巨人。Amazonギフト券をばらまくふるさと納税仲介サイトの多くが、そのAWSに依存し運営されているのが現状だ。

「このまま仲介サイトがAmazonギフト券を納税者特典で贈り続けることは、Amazonという敵に塩を送るようなことになりかねないか、という声もあります」(同前)

たしかに言いえて妙だ。さらに、本家Amazonが自社のギフトを他の仲介サイトよりも好条件で還元する“Amazonギフト券ばらまき祭り”すら予想されると同氏は話す。

これは納税者にとって大きなメリットではあるが、既存の国内仲介サイトは大打撃どころかとどめを刺される可能性すら浮上してくる。日本勢は“黒船”Amazonに屈するしかないのだろうか。

そんなAmazonに“反撃”の狼煙を上げたつもりなのだろうか、斎藤経産相は12日の会見で、フランスで導入済みの書籍の無料配送を禁じる「反アマゾン法」等を「研究する価値がある」とした。

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同記事によると、リアル書店の存在を危うくしているAmazonの送料無料化や過剰なポイント付与を問題視しているという。Amazonが書店を駆逐したのは事実ではあるが、今さら送料無料を禁止したとしても、それは紙の書籍が売れなくなるだけ。斎藤氏は「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」の幹事長を務めているというが、自分で自分にとどめを刺すだけではないだろうか。

「8:00 〜 12:00 にお届け予定でした」Amazonが意味不明のメッセージを連発中。商品はいつ届くのか?

それでは、Amazonに弱点はないのだろうか。

「Amazon打倒のヒントは、『お届け予定でした』という怪メッセージにあります。最近のAmazonは、その原点であるネット通販に大きな弱みを抱えているんです」

こんな指摘をするのは、マスコミ関係者の40代男性デスクだ。「●日●時にお届け予定」となっていた商品が指定日時を超えても一向に届かず、配送状況画面が「お届け予定でした」と謎の過去形になる現象が多発しているというのだ。SNS上にはこの怪メッセージに関する書き込みが溢れている。

《お届け予定でしたってなんだよ日時指定した意味ないじゃねーか》

《お届け予定でしたって開き直りやがったよアマゾン》

《お届け予定でしたじゃないよ、届けるのか届けないのかはっきりしてくれ》

《お届け予定でした?でしたってどういうこと?こっちは待ってたんだけど》

《お届け予定でしたにはどう返すべき?残念です!とか?》

ただ「待て」ということなのか、それともこちらから連絡しなければならないのか、商品がいつ届くのかまったく分からず、ユーザーは虚を突かれるばかりだ。

「配送会社に状況を確認しようにもなぜかリンクもなく追跡番号は手入力ですし、Amazonへの問い合わせ先もどこにあるのか分かりにくいことこの上ありません。ようやく発見しても、世耕弘成のトーク術を学習したとしか思えないチャットボットに行く手を阻まれ、カスタマーサポートと話すことすらままならないという謎仕様ですから…」(同前)

ようやく繋がっても、戻ってくるのは「商品が届くまでお待ちください」というテンプレ回答で、担当者によっては「配送会社にお問い合わせください」と指示してくる場合もあるといい、混乱に拍車をかけているのが現状と前出の男性マスコミ関係者は言う。

「最近はずっとこんな具合です。それでもAmazonサイドに改める気配はまったく見られません。こんな“アメリカ流”がAmazon最大の弱点ではないでしょうか(同前)

政府としても、書籍の無料配送を問題視するよりも、カスタマーをないがしろにするかようなAmazonの姿勢を論点にする方が“反撃”としてよほど効果的ではないだろうか。「楽天ふるさと納税」が大ダメージを被りかねない三木谷浩史社長が立ち上がることにも期待したいものである。

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