納税者を困らせる無能な税務官?無理ゲー子育ての被害者?なぜ税務署員は育児休業中に「転売行為」を繰り返したのか

 

4つ目は、冷静に考えると税務官が、ネットオークションを大々的にやっていたというのは、社会通念上、確かに違和感があるのは事実です。ネットオークションでの差益というのは、往々にして申告漏れをしがちというイメージがあります。またそのような販売に絡む、中間業者や最終的な販社なども公明正大に税金を払っているのかというと、多少信頼が薄い面があります。

だとしたら、税務官という立場の人は、商売として繰り返し取引するのは論外として、一回でも怪しい業者から買うとか、売るとかいうのも止めて欲しいという感じもします。また、そのようにプライバシーを縛るのであれば、悪事に手を染めないように税務官としての不自由さに見合う手当とか給料を出して、優秀な人材を入れないと困ります。無能で乱暴で公私混同するような税務官がいると、困るのは納税者だからです。

5つ目は、転売で稼いだ収入は生活費などに使っていたとこの元税務官は説明していたそうです。理由としては、育児休業中は無給のため、共済組合からの給付金があったが、「大体半分ぐらいに収入が落ちている」状態だったというのです。仮に、この人が20代で配偶者が無業か、あるいは非正規などで収入が少なかったとしたら、これは大変です。

20代の年収が育休で半減する、しかも配偶者の収入も少ないというのなら、途端に子育ては無理ゲーになります。そこを考えると、このケースの場合に情状酌量の余地があるし、本当に公務員の場合はそんな感じであるのなら、少子化は加速するだけだと思います。

6つ目は、国税局によると、育児休業期間中も所属長の承認を得た一部の特例を除き、兼業は認められていないというのです。この種の「所属長の承認」というのも疑問が残ります。兼業の内容というのはプライバシーだと思います。

実家がコンビニをやっているとか、農家なので稲刈りを手伝うとか、そういうのは全くのプライバシーだと思うのです。それを一々「専門でもない上司」に説明して、その上司が決定権を持つというのは、そのままパワハラまたはズブズブの関係の温床になります。税務官というのは、社会的な信頼が必要ですから、ある兼業を認める認めないという判断は、専門的で厳格であるべきです。またプライバシーですから、判断する専門職以外にはマル秘にすべきです。とにかく、所属長の承認という制度には強い違和感を感じます。

7つ目は、転売行為を業務とみなすという発想です。報道によれば、税務官が不要の私物を売却することが即問題になるわけではないそうで、「反復継続して売買することが事業とみなされ問題」というのです。ですが、不要なものは転売するというのは、財布の厳しい現代では誰でもやっていることです。公務員の場合がそこが「グレーゾーン」だということになると、脅迫やパワハラの温床にもなりかねません。ガイドラインは必要だと思います。

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