22年ぶりに解き放たれる安倍晋三の呪縛。北朝鮮「拉致被害者家族」が明かした、右派政治家たちの本音と“救う会”の真実

 

問題解決と報道の制約となる「安倍3原則」という虚構

このこと自体が、遺骨についての真実を覆い隠そうとする力が働いたのではないかと疑わせるものだったが、今なお謎のままである。加えて、今回福澤が「私も『覚悟』を決めて明かしました」と毎日インタビューに答えているのが「歯」の存在で、これもめぐみさんが既に亡くなっているという北側の説明を裏付けることになるかもしれないものであったけれども、少なくとも当時は関係者が一様にその存在そのものを否定し、このことも闇に葬られた。

なぜ今になってこのことを公にしたのかと問われて、福澤は、「日本政府の拉致問題対策は、『安倍3原則』とも呼ばれる『拉致3原則』に従っている」ので「テレビでも新聞でも報道には実は多くの制約がある。タブーと言ってもいい。3原則に疑いを抱かせるものは、なかなか報じられないのが実情です。逆に言えば、メディアも『政治』と一体になって国民に向けて3原則を『定説化』するような報道をしてきたのではないか、とすら思います」と答えている。

「安倍3原則」とは、こうしたプロセスの中で、めぐみさんらが「死亡したという証拠はない」→「生存している可能性が高いという前提で帰国を要求する」→「全員が生存しているのに北は嘘をついている」という具合に表現がエスカレートして行った挙句、安倍が06年9月第1次安倍政権を発足させると共に、「拉致問題担当大臣」「拉致問題担当総理補佐官」を新設、首相自身を長として全閣僚をメンバーとする「拉致問題対策本部」を立ち上げ、その基本方針として国策化されたものである。

  1. 拉致問題はわが国の最重要課題である。
  2. 拉致問題の解決なくして日朝国交正常化なし。
  3. 被害者は全員生存しており、即時一括帰国を求める。

もちろん、横田さん夫妻をはじめ「家族会」の方々が「死亡したという明白な証拠がない以上、生きていると信じて運動を続けていく」と考えるのは当然のことであるけれども、それはあくまで「運動」の原理であり、そのまま政府の「外交」の方針とはなり得ない。だから北との交渉は完全に行き詰まり、上掲書で和田春樹が言う通り「久しい間、首相以下政府閣僚は、胸に『救う会』のブルーリボン・バッジをつける以外のことをしていない」有様となった。ブルーリボン・バッジは今では「家族会」の中からも「やってるふりバッジ」と揶揄されているというのに、岸田文雄首相も含め恥ずかしげもなくそれを胸に飾っているのである。

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