またも「核の恫喝」を始めたプーチン。なぜ欧州はロシアを刺激する“NATO軍のウクライナ派兵”を口にし始めたか?

 

同じ2023年6月、ゼレンスキーは、「反転攻勢開始」を宣言しました。しかし、「反転攻勢」は失敗に終わります。失敗した主な理由は、二つ考えられます。

一つは、反転攻勢開始の時期が遅すぎたこと。アメリカは、「4月開始」を主張しましたが、ウクライナは「西側から十分な兵器が届いてから」と開始を2カ月遅らせて、6月にしたのです。この2カ月間で、ロシアは地雷原、塹壕などを築いてしまい、反転攻勢が困難になったのです。

もう一つは、ウクライナ軍の戦略ミスです。アメリカは、「南進にほとんどの戦力を集中させ、クリミアに向かって進軍せよ」と提案しました。ところがウクライナは、東、南、南東の三方面への進軍を主張し、実際そうしたのです。結果、ウクライナ軍の戦力は分散され、どの方面でも勝利することができませんでした。アメリカは、我を通して予想通り勝てなかったウクライナ軍にあきれたことでしょう。

そうこうしているうちに2023年10月、「イスラエル―ハマス戦争」がはじまりました。アメリカの関心は、ウクライナから中東に移ってしまいました。アメリカの「ウクライナ支援熱」は冷めていきます。さらにウクライナが反転攻勢に失敗したことで、そもそもウクライナを支援したくないトランプ・共和党が支援継続に反対するようになります。結果、主にトランプ・共和党が多数派を占める下院の反対で、アメリカはウクライナ支援を継続できない状況になっていたのです。

それで、ウクライナでは、三つの大きな問題が起こってきました。一つは、前線における弾薬不足です。当然ロシア軍が優勢になっていきます。もう一つは、都市を守る防空システムに使われる「パトリオットミサイル」の不足です。結果、ロシアのミサイルやドローン攻撃が、町を直撃する回数が増えました。さらに、ウクライナ軍の士気の低下です。「アメリカから見捨てられている。弾薬は送られて来ない。俺たちは勝てない。いずれ死ぬ」という展望は、士気を低下させます。

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