またも「核の恫喝」を始めたプーチン。なぜ欧州はロシアを刺激する“NATO軍のウクライナ派兵”を口にし始めたか?

 

さて、最後にロシアの立場です。ロシアでは、大きく二つの動きがあります。

一つは、ルガンスク州、ドネツク州の北に接するハルキウ州を猛攻していること。これは、「アメリカの支援がとどく前に、できるだけ支配地域を拡大しておこう」ということでしょう。

もう一つは、最初にでてきた、プーチンの「核による脅し」です。これは、

  • 欧州の武器でウクライナがロシア領を攻撃するのを容認する
  • NATO軍をウクライナに派兵する

ことが検討されていることに対するけん制です。

まとめてみましょう。現状、

  • 戦場ではロシア軍が優勢で、このままだとウクライナは年内に敗北する可能性がある
  • あわてたアメリカは、9兆3,000億円の支援を決めた
  • あわてた欧州は、「欧州製の武器でウクライナがロシア領を攻撃することを容認しよう」「NATO軍をウクライナに派兵しよう」という議論が起こってきた
  • ロシアは、「アメリカの支援がウクライナに届く前にできるだけ支配領域を広げておこう」とハルキウ州を猛攻している
  • 欧州の動きを恐れるプーチンは、核による恫喝を行っている

といった感じになります。

今後の見通しですが、ウクライナにアメリカの支援が届けば、戦況が変わるでしょう。ウクライナがロシアを押し戻し、再び膠着状態になる可能性が高いと思います。ですが、「アメリカの支援がきて、ウクライナが4州とクリミアを奪還できる」という感じにはならないでしょう。

アメリカは現在、「4正面作戦」を恐れています。つまり、「ウクライナ―ロシア戦争」「イスラエル―ハマス・イラン戦争」に加え、「台湾―中国戦争」「韓国―北朝鮮戦争」が勃発してしまう。それで最近は、アメリカも欧州も日本も、少し中国に歩み寄っているのです。「三正面作戦」「四正面作戦」にならないように。

中国にすり寄っているようにみえる岸田さんの動きも、すべて「アメリカの意向」に沿ったもの。別に「アメリカを裏切って中国にすりよっている」わけではありません。

以上、現在の「大局」でした。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年5月30日号より一部抜粋)

image by: Sodel Vladyslav / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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