渦中のマイナビに文春砲とは別の「不審点」
「もう2年くらい前の話ですが、急にマイナビから不審なメールが届きはじめたんです。メールといっても、ダイレクトメールやメルマガのたぐいではありませんよ。そのメールが、Web系サービスの登録には使ったことがない、メインのGmailアドレスに届くようになった」
MAG2NEWS編集部の取材に証言したのは、都内IT系企業の役員Yさん(40代)だ。どのようなメールだったのか?
「メールの内容は『バイトへの応募が完了しました』とか『バイト応募先から面接の日程連絡が届きました』といったものでした。私はずっと東京都内に暮らしていますが、メールに記載されている“仕事”は関西圏のものばかり。まったく身に覚えがない面接通知が届くようになったので、何だろうこれはと」
マイナビ社はリクルート社に次ぐ業界2位。総合転職サイト「マイナビ転職」のほか、アルバイト求人サイトの「マイナビバイト」なども幅広く運営している。
その後、マイナビからの通知メールはどうなったのか?
「最初は差出人を詐称した迷惑メールの類だろうと無視していたのですが、あまりにも人間くさいタイミングで通知が届くので、妙に気になってしまって。もしこれが“本物の人違いメール”だとしたら、誰かがバイトにあぶれていることになる。企業側も面接をドタキャンされている可能性がありますし、私も他人の就活情報を覗き見していることになりますので…そこで、マイナビの公式サイトの問い合わせフォームから、このメールについて質問してみたんです」
証言者のYさんによると、メールは常に個人名宛だったという。仮にYさんの実名が「山田太郎」だとすると、メールの宛名は「山下太郎」で、似ているか似ていないか絶妙なライン。この“山下さん”は、大阪や京都の飲食店や工場などのバイトによく応募している様子だったという。
数ヶ月間、メールが届かなくなることもあるが、そのうちまた集中的に届き始める。Yさんはしだいに「おいおい山下、またバイトやめたのか…」と気になるようになり、几帳面な性格からマイナビ社にメール配信停止と、メール誤送信の経緯説明を求めた。
「マイナビに問い合わせた結果、お詫びの返信があり、バイト応募や面接通知のメールは届かなくなりました。でも、いったいなぜ私宛に“山下さん”宛のメールが届いていたのか、原因の説明が一切なかったのはかなり不審に感じましたね」
単に停止したいだけなら、Yさん自身がGmailのフィルタ設定でメールをゴミ箱に直行させれば済む。だがYさんは単なる迷惑メールとは異なる“異変”を感じ、マイナビにわざわざ問い合わせたのだ。
IT企業勤務という仕事柄、Web関連のセキュリティに詳しいYさんは、この一件について下記の見解、疑問を持っている。
- マイナビに問い合わせた結果、メール送信が停止されたということは、当該メールは、同社が注意喚起している差出人を詐称した迷惑メールではないということを示す(Yさんはフィッシング詐欺を警戒してメール内のリンクは一切クリックせず、マイナビ公式サイトの問い合わせフォームから連絡した)
- ユーザーがメールアドレスを登録するサービスでは、アドレスの本人確認を行うフローが入るのが通例である。自分のGmailアドレスはどういう経緯でマイナビバイトに登録されたのか?マイナビは本人確認を行っていないのか、あるいはその他の原因があるのか?本人確認を行っていないなら、古典的なメールボム攻撃が成立することになる
- 多数のバイトに応募していた“山下さん”が、面接をドタキャンし続けていたとする場合、マイナビはその求人広告の効果を、クライアント企業にどのように説明していたのか?
- “山下さん”が、メール以外の手段で通知を受け取って面接を受けていたとする場合、マイナビは求職活動の情報が外部(Yさん)に漏れていたという事実を、“山下さん”にきちんと知らせたのか?
- 今回のようなトラブルは、この1件だけなのか?あるいは多発しているのか?
- そもそも“山下さん”は実在の人物だったのか?
Yさんは会社の中途採用でマイナビ系のサービスを利用していたが、この件があって以来、同社を信頼できなくなり、人事部門に利用の優先度を下げるよう指示したという。









