経産省渾身の「パワポ芸」は日本をどこに導くか?絶望的にダメなスライドを分析してみえた製造業の敗因と「逆転への道」

 

経産省の愚問「なぜ日本企業は利益率が低いのか?」の答え

それはともかく、では、ここで経産省が言っている問題点について考えてみましょう。

まずは、米欧の企業に比べて日本発の企業が「利益率が低い」のはなぜかということですが、この問題には明確な理由があります。

まず米欧の企業は、どんなに大きくなってもベンチャーのときと変わらず、成長しなくてはなりません。株価は常に近い将来の成長を織り込んで上がり、その上がった株価で企業の時価総額を増やしてファンナンスをします。そのカネを投資してさらなる成長を目指す、その繰り返しになります。

ですから、常に株価を維持しなくてはならず、そのためには最低で20%の粗利益率を確保するように経営しなくてはなりません。なぜならば、株主からそのようなプレッシャーがくるからです。

一方で日本型経営では株主よりも企業の所属メンバー、具体的には終身雇用で幹部候補である「総合職」の従業員コミュニティが最大の利害団体です。

そして、この従業員団体というのは奇妙なモチベーションに支配されています。それは、一種の和製英語である「ゴーイング・コンサーン」つまり企業の存続という問題が至上命令になっています。

ですから、大きな利益を稼いで株価を上げ、ファイナンスしてそれをリスキーな拡大へ向けて投資するというような行動パターンは取りたがりません。そうではなくて、昔で言えば金融機関などに持ち合ってもらった「安定株主」を前提に、10%弱の利益率での堅実経営をするのが良いとされてきました。

また、企業のトップにもそれほど大きな権限がなく、同時にその任期も「2期4年を無難に」過ごすのが良いとされていました。

さらに、1990年以降、日本経済が競争力を失う過程では、とにかく赤字を最小にしながら、総合職の従業員集団を守るためには「何でもする」といった後ろ向きの経営も多く見られました。

そうした本質的な問題に触れずに「どうして日本の企業は多国籍展開しても、米欧の企業より利益率が低いのだろう?」などと有識者と雁首揃えて「お勉強」をしても、何も出てこないのだと思います。

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