「脱Evernote宣言」した文筆家が、なぜか1年間“有料サブスク契約”に踏み切った理由

 

■度量の大きさ

その計画の進行は、このメルマガかニュースレターでお送りする予定ですが、それはそれとしてふと思いました。

「よくまあ、これだけのノートを集めたな」と。

脱Evernoteして以来、いろいろなデジタルノートツールを触ってきました。どれも独自の特徴を備えた素晴らしいツールたちです。しかし、それらのツールを使っていてもEvernoteのようにはノートが増えていきません。

一つには、私自身の「反省」があります。むやみやたらにノートを増やし過ぎてしまったがゆえに、Evernoteが混乱してしまった。その“失敗”を糧に、以降のノートツールではある程度厳選して情報を保存する使い方になっています。

もう一つには、ツールそのものの傾向があります。最近のツールは、単なる情報保存装置ではなく、PKMなどの知的活動をサポートする意図が強く出ています。Heptabaseなどはその好例でしょう。そうしたツールを使っていると、むやみやたらには情報は増えていきません。極言すれば、知的活動に「役立つ」情報しか保存しないのです。

その点を考えてみると、Evernoteは雑多でした。

アイデアメモやWebクリップなど、知的活動に役立つ情報も保存してはいましたが、それと並行して、日記、作業記録、プロジェクトノート、食事の記録などのライフログ、ツイートのログ、思いつきでとった写真、議事録メモ、引用ノート、勉強ノート……。

考えつく限りのものをEvernoteで保存していたように思います。「すべてをEvernoteに集めるぞ」という気概がその当時はあったのでしょう。そして、その気概を受け止めてくれる度量が──当時の──Evernoteにはありました。情報を保存するための経路が多く、AppleScriptにも対応していたので、工夫次第で自由自在に情報を保存できたのです。

だからこそ7万のオーバーのノートにつながった。

そういう歴史があったのだと思います。

■雑多さも踏まえて

考えてみたいのは、そうした雑多なノートは不要なのか、という点です。

たしかに、知的活動を進めていく上では選別は必要でしょう。なんでもかんでも集めていたのでは、情報に「作用」を与えることができず、そのまま死蔵させてしまうことは2008年からの10年間で学んできました。

一方で、いま旧アカウントを開いて「そうそう、こういうノートを作っていたよな」と振り返ることには純粋な楽しみがあります。この楽しみは、集まっている情報が雑多であればあるほど増強されるのではないか。そんな予想もあります。

とすれば、知的活動に向けたナレッジベースとなるデジタルノートツールと、生的活動(略して生活)に向けたライフベースとなるデジタルツールを切り分けて考えるのがいいのかもしれません。

実際、Obsidianを使いながらDayOneを使っている、という方もちらほら見かけます。それぞれに適した機能があるということと共に、情報を保存している場所が異なっている=文脈を分けている、という点が大切なのかもしれません。

「必要なものに絞る」「雑多に集めていく」

今後はこの二つの原理性を束ねて、デジタルツール環境を整えていこうと考えています。

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1980年生まれ。関西在住。ブロガー&文筆業。コンビニアドバイザー。2010年8月『Evernote「超」仕事術』執筆。2011年2月『Evernote「超」知的生産術』執筆。2011年5月『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』執筆。2011年9月『クラウド時代のハイブリッド手帳術』執筆。2012年3月『シゴタノ!手帳術』執筆。2012年6月『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』執筆。2013年3月『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』執筆。2013年12月『KDPではじめる セルフパブリッシング』執筆。2014年4月『BizArts』執筆。2014年5月『アリスの物語』執筆。2016年2月『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』執筆。

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