露朝の条約締結に「様子見」を決め込む中国の狙い
ところでロシアも北朝鮮も“同盟国”としてもつ中国はどうでしょうか?
今回のプーチン大統領の訪朝と様々な合意に対しては「あくまでも二国間の往来であり、中国がそれに対してとやかく言う立場にない」としていますが、その背後にはどのような思惑があるのでしょうか?
1つは今回のロシアと北朝鮮の合意内容は、欧米諸国とその仲間たちを刺激し、制裁対象になると予想されることからそれに巻き込まれることなく、中国独自の外交チャネルと手段を維持したいという思惑があると予想されます。
これにより、欧米諸国との折衝をロシア・北朝鮮対応を切り離すベースにでき、中国政府は独自の外交を行うというのが狙いと考えます。
しかし、中ロ間の絶対的な結束の存在も事実で、先日の中ロ首脳会談でも(プーチン大統領の北京訪問など)確認されているように、中ロともに相互に依存関係にあり、それぞれに背中を預け合っている関係ですので、ここに北朝鮮を巻き込んでおくことで、より強固な態勢を北東アジア地区に構築できるという戦略と共に、中国にとって必ずしも望ましいとは言えない北朝鮮の核開発にブレーキをかける権利を保持するという狙いもあるため、今回は一切コメントせず、様子を見守ることにしたと推測できます。
このような状況が様々な地域で同時に起こり、それぞれが化学反応をする中、中ロは北朝鮮、シリア、イラン、レバノン、そしてパキスタンとスタン系の国々を纏め、そこにトルコとのパートナーシップを加え、独自路線を走るアフリカとラテンアメリカ諸国を巻き込んで、非欧米型の緩いが崩れない体制を築き上げようとしているように見えます。
これが以前、国家資本主義体制のブロックと呼んだものですが、この結束が広がっているのは確かで、ここにインドが緩く結びつき、BRICSが拡大されることになると(サウジアラビア王国は参加予定ですし、インドネシアも参加の意向)、新しい国際秩序を生み出す大きな連帯が生まれることになるかもしれません。
予測不可能な国際情勢になってきていますが、国家として存続し、それなりのプレゼンスを保つためには、その場しのぎの対応に追われるのではなく、長期的なビジョンを構築し、明示し、そして行動することが必要だと感じます。
まとまりのない話になってしまった気がいたしますが、以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年6月21号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ
image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト









