他人のクレジットカードを食事や買い物に使っていたホームレスを逮捕した警察官。その二人の間にドラマが生まれました。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、韓国で起きた珍しい「ホームレスからの再起」のお話を紹介しています。
ホームレスの恩返し
20日午前8時、ソウル瑞草(ソッチョ)警察署の構内食堂に黒い野球帽をかぶったある男性が入ってきた。朝食を食べる他の職員たちとは違って、Tシャツにジーンズをはいて運動靴を履いている。彼は慣れたようにトレーを取ってご飯とおかずを盛って席に座った。警察署から車で5分の距離にあるソウル高速バスターミナル一帯で2年間ホームレス生活をしているパク・ギョンスさん(仮名・55)だ。
彼の向かい側には27年目の警察官である瑞草署強力係刑事の金ヨンマン警部補(54)が座った。キム警部補はセルフコーナーで直接作った卵焼きをパクさんのジャージャー飯の上にのせた。二人は1980年代の人気グループ歌手「船乗り」の映像をユーチューブで見ながら話を交わしつつご飯を食べた。
2人は今年2月、警察と被疑者として初めて出会ったもの。キム警部補は紛失申告されたクレジットカード使用事件を捜査し、高速バスターミナルでパク氏を捕まえた。パクさんは5000ウォン、1万ウォンなど小額を食事や食べ物を買うのに使っていた。調査過程でパク氏が一日に一食だけ食べているという話を聞いたキム警部補は「こんなことをしてないで警察署に朝ご飯を食べに来い」と話した。
翌朝8時、パク氏が警察署に訪ねてきて、2人は朝ごはんの友達になった。1人当たり5000ウォンの食事費用はキム警部補が払っている。キム警部補は、パクさんが警察署までバスに乗ってきたり、休みの日に食事を取ることができるように、たびたび交通カードにお金をチャージしてやっている。見知らぬ人物と毎日朝ごはんを食べるキム警部補を不審に思っていた同僚たちの間では、すぐにその善行がうわさになった。
パクさんも金警部補の好意に応えた。彼はターミナルを利用する市民が落としたクレジットカードや財布などを拾って警察署に持ってきてあげるようになった。朴さんが4か月間に拾ってきたクレジットカードは90枚に上る。パク氏はこの日の朝にもカードを拾った日時と場所などが書かれたメモと共にカード一枚をキム警部補に渡した。ターミナル一帯のホームレスたちの健康状態など近況を知らせてくれたりもしている。