NTTドコモの前田新社長はグループによる「暗黙の了解」を“無視”できるのか?

Tokyo,,Japan,-,Apr,22:,Ntt,Docomo,Shop,At,Hikarigaoka
 

NTTドコモでは6月14日付で前田義晃氏が社長に就任。18日に新社長就任会見を開催しました。社長の交代で最悪だったメディア対応が改善されることを願うのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、石川さんによる「通信でどう稼ぐか?」の質問への新社長の回答を掲載。AIや衛星関連などの具体例をあげ、グループの顔色を窺わず「NTTの空気を読まないドコモ」が復活することに期待を示しています。

ドコモ前田社長、通信品質改善を誓うも通信収入増の道筋は…

NTTドコモの新社長に就任した前田義晃氏が就任会見を開催した。この数年、NTTドコモはメディアへの対応が最悪だっただけに、前田新社長にはこれから積極的にメディアを通じて世間に発信してもらいたい。

個人的に気になったのが「通信収入をどう回復していくか」という点だ。世間的には「NTTドコモのネットワーク品質をどう回復させていくか」に注目が集まっている。また、iモードビジネスでパートナー戦略を担っていた前田氏だけに、非通信である経済圏の拡大や銀行の設立などは「喋って当然」の感があるし、会見で他の記者が聞くことを考えれば、あえて自分が聞くような話でもない。

一方で、NTTドコモは「土管屋」であり、通信料収入が半分以上を占めるのは今も昔も変わっていない。NTTドコモとして稼いで行くには、本丸である通信料収入をいかに増やすかが至上命題であるのは間違いないのだ。

「通信でどう稼ぐか」という質問をしたところ、前田社長は次のように答えた。

「昨年度にirumoやeximoを展開し、特に低料金のプランでシェア拡大を図ってきた。今後もシェアの拡大は重要だ。もちろん通信料収入を上げることは大切だが、新しい価値の分野、特に私が担当している非通信の分野では、売上を積み重ねるために顧客基盤が非常に重要。これを実現するためには、さまざまなユーザーのニーズにあったプランを提供しなければならない。その中で、低料金のプランが多くのお客様に支持されており、多くの方が加入している状況だ。(中略)

 

通信サービスの収入を上げるために、irumoやahamoのユーザーに、動画サービスなどと組み合わせた『爆上げセレクション』を利用してもらうことで、ARPU(を向上させる取り組みを進めている。これにより、通信量が増加し、上位プランに移行するユーザーも増えている」

NTTドコモに関しては、KDDIやソフトバンクに比べて、低容量プランの拡充が遅れた。他の2社は先行して始めている分、すでに回復基調に入り、モバイル収入の低減からは脱した感がある。NTTドコモとしては、これからirumoが本格的に普及してくるだけに、しばらくモバイル通信料収入の減少は避けて通れないだろう。

個人的に前田社長に期待しているのが「NTTからの脱却」だ。もちろん、株式を持ち株から取得し直して、出資比率を下げさせるというわけではない。NTTの完全子会社ではあるが、せっかく、NTTプロパーではない前田氏が社長になったんだから「NTTの空気を読まないドコモ」に戻って欲しい。

昨今、生成AIがブームとなり、NTTドコモとしては「tsuzumiを活用する」というの既定路線になっているが、Tsuzumiより、ChatGPTやGeminiが良いと思えば、Tsuzumiをシカトしてもいいだろう。衛星関連も「NTT C89」がイマイチだと思ったら、しれっとスペースXとの関係を強化すれば良いのではないか。

NTTグループによる暗黙の了解を一切、無視し、前田氏がNTTドコモの社長に就任したということは、そうした無茶も多少は許されるのではないか。この数年、本当にNTTドコモの魅力が下がってしまっていただけに、とにかく、前田新社長にNTTグループの中で空気なんて読まず、暴れまくってもらって「面白いNTTドコモ」にしてもらいたい。

この記事の著者・石川温さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Takashi Images / shutterstock.com

石川 温この著者の記事一覧

日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 石川温の「スマホ業界新聞」 』

【著者】 石川 温 【月額】 初月無料!月額550円(税込) 【発行周期】 毎月 第1土曜日・第2土曜日・第3土曜日・第4土曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • NTTドコモの前田新社長はグループによる「暗黙の了解」を“無視”できるのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け