とにかくお客さまに喜んでいただくことが第一。
美味しいものを食べて、幸せな気分になって欲しい。ただ、それだけなのです。
お客さまを想うあまり、定休日にもお店を開けてしまっているのです。
定休日にしか来られないお客さまがいると言うのです。
「歳を取っているので、早く食べられない。混雑している中でゆっくり食べるのは申し訳ない」という高齢者が結構いることを知り、そんな人のために、惣菜やちらし寿司などのご飯物を作って、販売しているのです。
また、買い物ついでに店主のお母さんと話をするために来ている人もいます。
お母さんも常連さんとゆっくり話をする時間を楽しみにしています。
長年地域に溶け込んで営業してきたお店には、人の繋がりがあります。
お客さまとお店という関係ではなく、人と人、友達のような親しみです。
こうした関係づくりができているお店は、永続の可能性が高くなります。
後継者がいれば、将来に渡って、愛され続けるお店となることでしょう。
ここ千成亭は、そんなお店なのです。
……しかし、たったひとつ不安材料が。
「旨い・安い・大盛り」というお店は、店舗に経費があまり掛かっていない場合が多いのです。
所有する自宅であったり、古い物件で賃料が低いなど、安く提供できる環境下で営業しているからです。
もし、建物の老朽化や再開発などで、立ち退きを迫られると、お店の存続は難しくなります。
お客さまのために、儲けを度外視してきたことで、蓄えがあまりなく、新店舗での再出発が困難になります。
お客さまのための自己犠牲が、仇となるのです。
お客さまを想ってやってきたことなのに、お客さまを悲しませてしまう結果になるかもしれません。
将来、移転の可能性があるとわかっているなら、少しでも値上げして、準備をしておく必要があります。
千成亭は、ほぼ廃墟です。
老朽化による危険度が増せば、退去せざるを得ません。
その時、準備ができていなければ、すべてが終わってしまいます。
この場所は、それほど時間が残されているとは思えません。
みんなに愛されているお店は、はたしてどうなってしまうのでしょうか。
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