始まりは「衝撃の調査結果」から。秋田で熱を帯びる「生涯学習」の取り組み

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実態把握のための調査が、自治体の取り組みを一変させることがあります。2020年の「障害者の生涯学習に関するニーズ調査」で、社会教育施設の利用率が全国平均と比べて極端に低いことが判明した秋田県は、その気づきをきっかけに「障害者の生涯学習」への取り組みを急激に進めるようになったようです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、生きづらさを抱える人たちの支援に取り組む引地達也さんが、秋田県の数字合わせではない“熱を帯びた”取り組みを紹介。確立された教育観から抜け出せない人や地域にとって、学びがあると伝えています。

秋田の熟議が生む垣根のない生涯学習

2021年、秋田県での障がい者の生涯学習カンファレンスで、秋田大学附属特別支援学校の高等部の生徒向けに公開講義を行った私は、そこで秋田県の生涯学習を推進する面々の情熱に触れ、以来、全国各地でこの分野で話をする際には秋田県の熱を帯びた取り組みを紹介してきた。

みんなの大学校のオンライン講義「音楽でつながろう」には秋田県の福祉サービス事業所が参加しており、勝手ながら私は、秋田県を「障がい者の学びを推進する同志」と思い続けている。今月、久しぶりに現地に足を運んで近況を知る機会を得て、秋田の生涯学習がさらに進み、そして課題を見つけ、前に進もうとしている姿を確認した。

その中心にいる秋田県生涯学習センターは自分たちの役割を明確にし、交流の場所を運営しながら当事者の声を得る環境のもとで、県内の各地域で「熟議」を進め、地域活性の核にする活動を展開している。

秋田県生涯学習センターは、その役割を「シンクタンク機能」「研修・人材育成」「学習活動推進・情報発信」の3機能とし、それぞれ「調査」「研修」「講座」を具体的な活動と位置付けている。障がい者の生涯学習の活動は2020年実施の「障害者の生涯学習に関するニーズ調査」から始まった。

調査は県内の特別支援学校高等部生徒の保護者や卒業後3年以内の保護者で684人が回答。回答結果は文科省の全国調査結果と比較した。前提として「『共に生きる社会』になるために、障害のある方の生涯学習の機会が必要だと思いますか」の問いに94%が「そう思う」「まあそう思う」と回答、ニーズの高さを確認したが、その中身が「衝撃的だった」(皆川雅仁・同センター主査)という。

「お子さんは、生涯学習をどのように続けていますか」に対し「公民館や生涯学習センターなど公的な機関における講座や教室」が全国では13.8%に対し秋田県は2.7%、「図書館、博物館、美術館」が全国17.7%で秋田県は9.1%。誰もが学べる場所のはずの社会教育施設が学習の場として機能していない実態が浮かび上がってきたのだ。

生涯学習センターの職員は、何を目指し、何をやるのかを徹底的に議論し、導いた答えに向けて動いた。それが「ツドウベース」「熟議」「街歩き」「防災講座」「ボッチャ大会」として、活動が展開してきた。

生涯学習センター内にあるツドウベースは、県内の企業の協力を得て、運動が出来るコートシートが敷かれ、ボッチャやバドミントン、卓球バレーが常に出来る環境を整えた。利用の対象は「障がい者の生涯学習支援を内容とする活動」に限定し目的を明確化し、ツドウベースでのボッチャに人が集い、場所を拡大し、交流大会を開催するまでになった。

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