政府目標の「死者8割減」が達成困難なワケ
だが、現実はそう単純ではない。大阪府のように、もともと政府発表より被害を大きく想定していた自治体もあるのだ。
大阪府防災会議が13年10月30日に公表した被害想定では、津波などによる死者が、最悪の場合、内閣府の想定(最大9800人)の約13.7倍にあたる13万3891人となっている。
政府発表のうち、大阪府だけをこれに置き換えたら被害想定の数字は一気にはね上がり、他自治体との整合性がとれなくなってしまうだろう。
南海トラフ地震については、最新の知見により、地震動の推計や津波浸水範囲の計算などの手法を変更する必要性が生まれている。もちろん対策の進捗もあるため、政府は昨年来、被害想定の見直し作業に取り組んできた。
その成果としての改定基本計画を今年春にも発表する予定だったのだが、計画のとりまとめが大幅に遅れ、その間に今回の宮崎の地震が起こってしまった。
そんなこともあり、各メディアとしては、改定計画が出てくるまで、従来の数字を使わざるをえないのが現状なのだろう。
政府は防災対策の進展を反映させるため2019年、想定死者数を23万1000人とする再試算の結果を公表しているが、その数字さえほとんどのメディアで使われていない。
南海トラフ地震の防災対策を検討する政府作業部会の福和伸夫名古屋大名誉教授は昨年4月、想定死者数を8割減らす政府目標について「達成は難しい状況」と語った。要するに、対策が進んだといっても、まだまだ不十分ということらしい。









