日本は自助の国だ?南海トラフ地震「想定死者32万人」が全く減らぬワケ…防災対策に遅れ、長期復興プラン「手つかず」の現状

 

「想定死者数32万人」は変更されない可能性も?

よく知られたことだが、近いうちに南海トラフ地震が起きるという推定は、歴史的事実に基づいている。

日本列島は、海側のフィリピン海プレート、太平洋プレート、大陸側のユーラシアプレート、北米プレート、これら四つのプレートが押し合い、圧縮され、隆起して形成された。このため日常的にどこかで揺れが観測されている。

地球を卵に例えれば、プレートは表面の殻にあたる「硬い岩」だ。その下にマントルという1000℃以上のやわらかい岩があり、流動している。

南海トラフは、フィリピン海プレートが、陸側のユーラシアプレートの下に潜り込んでいる海溝で、4000mもの深い海底の凹地が、駿河湾から四国沖にかけて連なっている。

この海溝沿いに、東日本大震災と同様のプレート境界型地震が100年前後の間隔で繰り返し起きた。慶長地震(1605年)、宝永地震(1707年)、安政の東海、南海地震(1854年)、昭和の東南海地震(1944年)、南海地震(1946年)……。

そのため、南海トラフ地震の周期は「100年に一度」と定説のように言われてきた。ただし、昔の地震の規模については、明確な記録がないことや、マグニチュードの計算方法が考案されたのが1935年以降のことであるため、はっきりしない。

1707年の宝永地震はM8.4ないし8.7だったとされているが、遺跡の地震・津波の痕跡や古文書の記述からマグニチュードを推定しているにすぎない。

最大でM9.0クラスの地震を南海トラフに想定したのは、東日本大震災がきっかけだ。想定をはるかに超える巨大地震と津波が太平洋プレートと北アメリカプレートの境界域で現実に発生したのだから、南海トラフでも起こりうる。東日本大震災の被害状況のデータを加味して「最大規模の地震・津波」を想定し、被害予想の推定値を算出する必要が生じたのだ。

そこから想定死者数32万3000人という数字がはじき出されたわけだが、「人心の安定」を重視するこれまでの政府の姿勢から見て、改定基本計画が出ても大きく変更されることはないかもしれない。大幅に減らしてしまうと、国民の危機感が薄れて備えがおろそかになる恐れがある。推計手法の見直しなどで増えることもありうるが、あまり増やすと不安をさらに煽ってしまう。

print
いま読まれてます

  • 日本は自助の国だ?南海トラフ地震「想定死者32万人」が全く減らぬワケ…防災対策に遅れ、長期復興プラン「手つかず」の現状
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け